宗教的な有権者にとって中絶問題は主要なテーマだ。ハリス氏は「生殖の自由」を全面的に支持する一方、トランプ氏は中絶の規制を各州に任せる意向を示した。これは、2022年に連邦最高裁が「中絶の権利は憲法上保障されていない」と判決を下したことに起因する。ワシントン・ポストの調査によると、トランプ氏は中絶規制に反対する有権者の28%、厳格な中絶反対派の90%から支持を集めた。
選挙直後、米国司教会議は公式な反応を示していない。なぜならば、司教たちは今回の選挙で全体的に政治から距離を置いていたからだ。ヴィラノヴァ大学の神学者マッシモ・ファッジオーリ氏によれば、「カトリックの有権者が大きく分かれている」ため、司教たちは過度に政治的な姿勢を取らないように努めたからだと受け取っている。激動州(スイングステート)では、世論調査によるとカトリック教徒の50%がトランプ氏を、45%がハリス氏を支持している。
バチカンニュースはバチカンの国務長官であるパロリン枢機卿の見解を大きく紹介している。パロリン枢機卿は7日、トランプ氏が新しい米国大統領に選ばれたことに対し、「米国内の深い分裂を克服し、全ての国民の大統領になってほしい」と要望している。そのためには「知恵」が統治者の最高の徳だと聖書から引用をしている。ウクライナ戦争や中東戦争などの国際紛争については「緊張緩和と平和構築」に貢献する役割を果たしてほしいと述べる一方、トランプ氏の移民政策にも言及し、トランプ氏が表明した中南米からの移民の大量追放計画に懸念を表明している。
興味深い点は、トランプ氏が中国共産党政権には批判的な立場を取ってきていることを意識したのか、バチカンが中国との対話を優先した融和的な政策を実施していることに触れ、「バチカンの対話はあくまで教会の性格を持つものであり、政治的な相違を超えたものである」と明言し、バチカンはこの方針を維持し、中国との長期的な関係構築に取り組むために、対話を継続していく意向を強調していることだ。