──あの怪僧ラスプーチンってイギリスのスパイだったんですよね。
ジェームズ:はい。それは以前の記事で紹介していますね。ともかく、古い歴史を持つ諜報組織で、1994年にイギリス政府がその存在を認めるまでは謎の組織とされてきました。94年以後も公にはほとんど出てきていなかったので依然として謎の組織扱いされてきたのですが、ここ5年ぐらいでごくたまに公の場で存在を示すようになってきています。
──ということは7月の長官の登場には大きな意味があるんですね。
ジェームズ:当然、意味があります。注目されたスピーチの内容ですが、ロシア情勢に関するもので、プリゴジンが欧米サイドと協力していたことを匂わせるような発言を何度もしていたことです。たとえば、プリゴジンの乱でプリゴジンがモスクワに進軍していた際にプーチンとプリゴジンはが密かに話し合ってプリゴジンが撤退を決めたと言ったり、プリゴジンの言葉を引用してウクライナ戦争はショイグの昇進のために始められたものだと言ってるんですね。プーチン体制を批判するのは西側の規定路線なんですが、なぜか、プリゴジンは否定しないんです。逆にプリゴジンの言葉を引用して現状を説明しているんですね。その行為はプリゴジンに間接的に正当性をもたせることになります。
──確かにそうですね。
ジェームズ:あとはイギリスのMI6の長官が公の場でプリゴジンの言葉を使って現状を説明しているということは彼らのインテリジェンス分析とプリゴジンがやっていることが一致しているということになります。イギリス側も、ウクライナ戦争はショイグ国防大臣を筆頭とするクレムリンの中の一部の勢力の都合によって始められたものだと言っているわけです。これは私もウクライナ戦争が始まった直後にすでにお話しています。
彼はさらにプーチンが今後、蹴落とされる可能性が高いという発言もしていまして、プーチンの側近によるクーデターか、国内からのクーデター、国外からの介入によってプーチン体制が倒れる可能性があると言っています。つまり、ロシアでクーデターが起こる可能性を示唆することと、事実上プリゴジンの擁護のためにMI6の長官がわざわざスピーチしたということなんです。