性的少数者の人権をめぐり、同性婚を認めること、昨秋の最高裁判決で違憲・無効となった性同一性障害特例法の生殖不能要件のもと不妊手術を受けた人への賠償の要請がなされた。人権侵害された個人が国際機関に訴える個人通報制度についての「選択議定書」の批准も要求しているが、国際機関が越権行為をしないなど信用されなくては難しいことだ。
沖縄の女性への性暴力を防止し、加害者を適切に処罰することなども求めたのは、日米地位協定に関するものだが、この改定の障害になっているのは、人質司法など日本の司法制度の後進性であるが、そうした事情は無視されている。
中絶に配偶者の同意が必要だとしている母体保護法の要件削除については、審査の中で「日本が近代国家、経済大国であることを考えると驚くべきことだ」と暴言ともいえる発言をした委員もいた。
女性議員の数が少ないことに鑑み、国会議員に立候補する際の供託金300万円を女性については減額し、意思決定に女性を増やすというのは、ITアナリストの深田萌絵氏が、35秒の演説で訴えたものだが、これも最終報告での勧告として採用された。
日本企業による北アフリカなどでの鉱山投資について、「ジェンダーに基づく暴力と労働搾取の増加に直面している女性に有害な影響を及ぼしているとの報告に懸念をもって留意する」とあったが公正とは思えない。
また、「慰安婦」への記述をやめた教科書に対するネガティブなニュアンスの記述もあるが、十分に調査検討したものではなさそうだ。あいかわらず、左翼・リベラル系の活動家に比べて政府のロビー活動の手薄さも気になった報告書だ。国連と丁々発止やり合うことはどこの国でもやっており、何も国連軽視でもなんでもない。
戦前の国際連盟脱退のトラウマから、個別機関からの脱退や資金ストップをちらつかすことなどを日本はやらないが、主要国はそういう戦いも厭わないのを常識にしている。
皇室典範については、2016年にも報告書で皇室典範の見直しに言及しようとしたが、日本政府の反論を受け草案段階で削除された経緯がある。ところが今回は、いろいろと留保はついているが扱われている。