ホームセンター「カインズ」の従業員が商品をぶん投げて陳列する様子を収めた動画がSNS上で拡散されている。カインズは10月4日付「J-CASTニュース」記事の取材に対し事実を認めているが、ある外食チェーン関係者は「人手不足の深刻化による従業員の採用基準の緩和と“甘やかし”で、従業員の問題行為が増えている」と嘆く。

 計239店舗(3月1日現在)を展開するカインズは、国内ホームセンター市場では店舗数ベースでコメリ、DCM、ホームセンターナフコ、ホームセンターコーナンに次ぐ5位。DIY用品、建築資材・部品や工具、ガーデニング・園芸用品に加えキッチン、バス・ランドリーなど各種生活用品、アウトドア用品、家具、家電、洗剤やトイレットペーパーなどの日用品、ペット用品、ベビー用品、医薬品、カー用品、物置、食品など、“ないものはない”というくらい豊富な品揃えで人気のチェーン。自社で開発する便利で低価格なプライベートブランド(PB)商品にも力を入れており、売上高に占めるPB商品の比率は約4割に上るという(2023年12月9日付日本経済新聞記事より)。DIYを体験できる「カインズ工房」、リフォームの相談窓口が設けられた店舗もある。運営会社のカインズは「ベイシア」「ワークマン」「ハンズ」などを擁するベイシアグループの中核企業だ。

 そんなカインズをめぐる動画が今、SNS上で物議を醸している。あるアルバイト従業員が商品をぶん投げ、それを受け取った別の従業員が陳列していく様子を収めた動画だが、前出「J-CASTニュース」記事によれば23年11月にある店舗で撮影されたものだという。

 従業員が悪ふざけ行為や問題行為をはたらき、その動画や写真をSNS上に投稿するケースは以前から起きていた。13年にはコンビニエンスストア「ローソン」の従業員が店内の冷蔵ケースの中に横たわる様子を撮影した写真をSNS上に投稿。これがバイトテロという言葉が世に定着するきっかけとなり、最近では今年2月、「しゃぶ葉」の従業員が口の中にホイップクリームを流し込む動画を撮影し投稿。同月には「ドミノ・ピザ」の従業員が鼻の穴に指を入れ、その指をピザ生地に入れる動画を投稿していた。

アルバイト従業員をめぐる変化

 そうしたアルバイト従業員の問題行為について、最近は質の変化がみられると外食チェーン関係者は指摘する。

「今の10~20代はSNS利用のリスクに敏感なため、よほどリテラシーが低い人でない限り、自らの問題行為をSNS上に投稿するということはしないようになっています。その一方、かつてバイトテロとされる行為をする人はそれが悪い行為だということを認識してやっていたと思われますが、最近は悪い行為だという認識がないままにやってしまっている従業員が増えていると感じます。たとえば、明らかなミスをしても悪いという認識がなく、それゆえに謝罪の言葉を口にしなかったり、食べ物に触れる容器や調理器具が床に落ちて、洗浄せずにそのまま使ったり、レジの操作でわからくなり、お客さんに何も言わずにその場から離れて他の店員を呼びに行ったり、レジでお客さんを目の前にして無表情で『あっ!』『どうしますか?』と言ったり、これまでもそうした問題のある従業員というのは一定数いるものでしたが、明らかに増えています。

 今回のカインズの動画も、映っている2人の従業員は楽しそうに笑っており、商品を放り投げるという行為が悪いという認識すらなく、単に楽しかったから投稿したのではないでしょうか」

 別の外食チェーン関係者はいう。

「明らかにお客に聞こえるほどの大声でおしゃべりをするアルバイト従業員が増えました。お客さんからちょっとしたクレームを受けても、何を言われているのかよくわからないという表情を浮かべて『申し訳ございません』の一言が言えなかったり、一回クレームを言われただけで辞めてしまう人も増えています。以前であれば一部の問題が目立つ従業員に注意すれば済んでいましたが、今がみんながみんなそういう感じなので、どうすべきか解が見つかりません。特に今は人手不足でバイトやパートを確保するのが大変なので、厳しく言って辞められると困りますし、パワハラだと騒がれると面倒なことになるので“甘やかし気味”になってしまいます。また、以前では面接の段階で落としていたレベルの人でも採用せざるを得なくなっており、そうした採用基準の緩和も接客サービスの質の低下に拍車をかけている面もあるでしょう。カスハラという言葉が浸透したことで、従業員側の意識も『クレームを言う客のほうが悪い』というふうに変わってきている点も影響していると感じます」