「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によれば、「中国では最近、人が多く集まる場所などでの刃物による事件が相次いでいる」という。NHKは先月20日、「ことし6月には東部の江蘇省蘇州で日本人学校のスクールバスが、刃物を持った男に襲われ、日本人の親子がけがをし、男を止めようとした中国人女性が死亡する事件が起きていることから、現地で生活する日本人の間で安全への不安が高まっている」という。
犯行の容疑者が中国人男性、襲われたのが児童、という共通点を持つ事件が短期間に相次いで発生したことから、何らかの推測や結論を付けることは危険であるが、その衝撃は無視できない。なぜ中国人男性が異国の児童を狙ったのかだ。
さまざまなメディアが既に様々な分析をしているが、以下、これまで報じられた情報をまとめてみる。
①メンタルヘルスや社会的プレッシャー 多くの場合、こうした事件の加害者は精神的な問題を抱えていたり、社会から孤立していることがある。中国の急速な経済発展は大きな社会的変化をもたらし、一部の人々にとってはストレスや疎外感が増している。過去のケースでは、こうした暴力的なナイフ襲撃を行った人物は、個人的な不満、失業、あるいは精神的不安定さが原因で事件を引き起こしている。
②政治的または反外国感情 これらの事件が直接的に政治的な動機に関連しているという明確な証拠はないが、中国国内で高まるナショナリズムや、他国(特に日本)との緊張関係が間接的にこうした暴力を助長している可能性がある。
③厳格な銃規制とナイフへのアクセス 中国では厳しい銃規制があるため、ナイフが暴力行為を行おうとする人にとって最も手に入りやすい武器となっている。そのため、銃が手に入りやすい国と比較して、ナイフによる殺傷事件が多発していることが一因だ。
「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」紙は、「中国国内でナショナリズムが高まっていることに対する懸念はあるが、中国政府は、殺傷事件が外国人に対する広範な反感を反映したものではないと強調している」と報じている。ちなみに、スイス最大の政党である極右「国民党」はソーシャルメディアでこの事件に言及し、「輸入犯罪にうんざりしているなら、国境を守るための嘆願書に署名してください」と、ナイフを持った両手の写真も添えた記事を投稿している。スイスの極右政党はチーリッヒの児童刺傷事件を移民問題と関連して受け取っていることが分かる。