11日付日本経済新聞記事によれば、トヨタ自動車の国内販売店で現在、主要20車種のうち半数が受注制限により注文できない状況となり、「ランドクルーザー300」「アルファード」「アクア」などの人気車種が一部店舗で受注停止になっているという。なぜこのような事態が起きているのか、専門家の見解を交え追ってみたい。

 トヨタの販売は好調だ。2023年4~9月の世界販売台数は前年同期比9.1%増の517万台で、半期の実績としては過去最高。国内も1~10月の新車販売台数が前年同期比27.8%増の134万台で、登録車に限れば国内市場シェアの5割以上を占める。

 人気車種には注文が集中している。6月に発売された新型「アルファード」は500~800万円台と高価格ながら、発売1週間後の時点で注文から納車までのリードタイムが2年ほどになる事例もみられた。

 トヨタは新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年度、国内販売(軽自動車含む)は前期比4.3%減の220万台に落ち込んだが、22年度に3年ぶりの前年度超えとなってからは好調が続いている。コロナ禍による世界的な半導体不足の深刻化でトヨタでも生産遅延が発生。今年に入り緩和されたが、日経新聞記事によれば、生産遅延の間にも予約を受け付けていたため、納車が未完了の「受注残」が積みあがったことも現在の受注制限の背景にはあるという。

販売チャネルの統合化も影響

 トヨタの販売現場はどのような状況なのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。

「複数のトヨタの販売店に確認したところ、たしかに車種によっては受注制限をかけているそうです。アルファードやアクア、ランドクルーザーなど、比肩する車種がないようなモデルは当面の間、生産が追いつかないのではないかとの見通しです。こういった現象はトヨタだけなのかというと、他ブランドでも同様に受注制限をかけている車種はあるようですが、トヨタほど多車種には渡っていません」

 完成車メーカーのなかで受注制限が起きているのはトヨタのみなのか。

「トヨタだけと言い切るのは語弊があるかもしれませんが、トヨタ車の受注制限が目立つのはたしかですね。その原因はいくつかあります。

 ひとつは、単純にコロナ禍から続く『受注残の車両がまだ多い』ということ。注文を受けている数に生産が追いついていないわけですが、在庫を多く抱えずにユーザーからの注文に応えていくトヨタ生産方式の影響もありますし、従来の複数販売チャネルを統合化したことによる全車種併売によって、売れる車種に偏りが出ているということも要因のひとつに挙げられると思います。もちろん、半導体不足による生産の遅れというのが完全に解消されていないという面も影響はあるかと思われます」(桑野氏)

 トヨタは従来、国内では「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4つの販売店を展開し、各販売店ごとに取り扱う専用車を設定していたが、2020年に一部車種を除き全車種併売化をスタートさせた。