また、20歳の時、ロッキード問題でマスコミに叩かれながらも選挙に圧勝した田中角栄に興味を持ち、新潟まで会いに行った。本人には会えなかったが、越山会の人々の田中角栄に対する熱い思いを聞き、最後に「越山会に入れ」と勧誘され、帰って来たという。「政治の原点は、マスコミじゃなく、庶民の心をつかむことだ」と実感し、それが政治家としての原点になった。
僕は泉さんとの共通項を、いくつも見出していた。興味を持ったり、疑問を持ったら、可能な限り現場に行き、当事者に話を聞くこと。ジャーナリストと政治家という違いはあるが、それは共に大前提なのだ。
そして必要なことであれば、堂々と批判する、また、批判されることも恐れない。だからこそ僕は泉さんの批判を読んで、話してみたいと思ったし、泉さんも応じて議論をした。そんなことが実は民主主義の基本だと思う。それなのに、まともな議論をしない政治家が多すぎる。
僕は泉さんと話し、「こういう政治家がまだいるのか」と、うれしく、また救いを感じた。泉さんはまだ60歳、「この日本を優しく」変えてほしいと思っている。ところで、泉さんの引退勧告に、僕はどう応じたか。
「泉さんには『去り際の美学』があるわけ。僕にはないの。死ぬまでやろうと思ってる。殺されてもいいと思って『朝生』をやってきたんだから」
対する泉さんも、最後にはこう言ってくれた。
「『去り際の美学』というのは、きれいに辞めることだけではないということですよね」。
4月15日に僕は90歳を迎える。まだまだ去るわけにはいかない、改めてそう誓った。
編集部より:この記事は「田原総一朗 公式ブログ」2024年3月29日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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