■600台の“オモチャ戦車”作戦
デクアーズ氏によればゴースト・アーミーがその真価を十二分に発揮したのはドイツ・オランダ国境の「フィールゼン作戦」であったという。
1945年3月18日から3月24日まで行われたこの作戦では、ライン川沿いに600台の“オモチャ戦車”が配置され、他の実在する部隊の兵士になりすまして作戦が遂行された。部隊を展開した後には橋を建設する音源を流して、ライン川を横断する橋を建設中であると敵に信じ込ませたのだ。
「ドイツ軍を欺いて、第30歩兵師団と第79歩兵師団がライン川を渡る準備をしていると信じ込ませようとしました」(デクアーズ氏)
この後ドイツ軍は自軍の大部分を移動させ、敵の2つの師団がいると思い込んだ場所を砲撃した。そしてナチスはこのゴースト・アーミーに気を取られているうちに、実際の敵の本隊を見失ってしまったのである。
ゴースト・アーミーの活躍ぶりは実に痛快だが、戦での“騙しの手口”そのものは古来より研究されていることもよく知られる通りだ。
最も有名な例の1つは紀元前8世紀の“トロイの木馬”だ。ギリシア軍は高い城壁に囲まれたトロイアの街を攻略するために巨大な木製の馬の贈り物を受け取らせ、その中に潜んでいた兵士の活躍がトロイア戦争の勝利につながったのだ。また古代中国では有名な“孫子の兵法”もあり、その中では戦における騙しの手口がいくつも挙げられている。
面白い話としては、南北戦争中の南軍では丸太を彫刻して大砲に見えるように塗装したものを野営地の周りに配置していたという。これを北軍のスパイに見せ、武器と物資が不足していないことを偽装したということだ。
このように戦における騙しの手口は古来よりあるのだが、このゴースト・アーミーは騙すことに特化して結成された最初の軍隊ではないかといわれている。彼らの足跡は戦争の歴史においてユニークな輝きを放ち続けるだろう。
提供元・TOCANA
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