2016年、日本の研究者たちはクマムシは、地球上の他の動物にはみられない「Dsup(ダメージサプレッサー)」と呼ばれるタンパク質を生成しており、この「Dsup」にはDNAに結合して有毒物質から保護する機能がある可能性が示しました。

さらにクマムシの遺伝子から「Dsup」の遺伝子を切り出して人間の細胞に加えたところ、人間の細胞も放射線や有毒物質に対して高い耐性を持つように変化したことが示されました。

2020年にはタバコにDsup遺伝子が導入されタバコのDNAを損傷から保護し、成長速度も増加させることに成功しています。

1773年からはじまったクマムシの研究は着々と進歩し、250年かけてヒト細胞に対して応用できる域に到達しました。

もしこのまま研究が順調に進んでクマムシの驚異的な耐性を人間やその他の生物にも完璧に付与できるようになれば、地球生命は宇宙環境にも適応できる、新たな段階に到達するかもしれませんね。

※この記事は2022年7月に掲載したものを再掲載しています。

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参考文献

Tardigrades could teach us how to handle the rigors of space travel
https://www.sciencenews.org/article/tardigrades-space-travel-survival-humans

元論文

Extremotolerant tardigrade genome and improved radiotolerance of human cultured cells by tardigrade-unique protein
https://www.nature.com/articles/ncomms12808

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。