9月、菓子製造・販売の人気チェーン「シャトレーゼ」の商品「揚げ餅焼きとうもろこし小袋」にカメムシが丸々1匹混入するという事態が発生。今月6日放送の報道番組『Live News イット!』によれば、購入した女性はシャトレーゼに連絡したところ、2週間以内に原因と状況を報告すると告げられたが3週間以上、同社から連絡はなく、改めて女性の夫が同社に連絡したところ、同社から「工場と連絡がつながらないから、責任者とお話しする機会を設けることができない」と言われたという。一般的に食品製造工場でカメムシの大きさの虫が混入するケースはよくあることなのか。また、顧客から情報提供を受けた後の一連のシャトレーゼの対応はどう評価すべきなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
シャトレーゼは国内外に合計約1000店舗を展開し、「チョコバッキー」「ダブルシュークリーム」「うみたて卵のふんわり厚切りロール」「北海道産バターどらやき」をはじめとする定番商品で知られ、お手頃価格のケーキや洋菓子、和菓子、アイスといったスイーツ類のほか、パン、冷凍食品、ワイン、日本酒なども扱う人気チェーンだ。創業は昭和29年(1954年)。現在ではケーキなど洋菓子のイメージが強いが、今川焼き風のお菓子を販売する店舗「甘太郎」が発祥で、昭和42年(1967年)に社名をシャトレーゼに変更。現在のFC(フランチャイズチェーン)システムによる店舗展開を始めたのは昭和50年(1975年)のことだ。
持ち株会社のシャトレーゼホールディングスは洋菓子店のほか、ワイナリー、ホテル、ゴルフ場などを展開。2019年からは高級志向の都心型新ブランド「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を展開。運営するシャトレーゼホテルなどの宿泊施設はスイーツバイキングが満喫できるとしてシャトレーゼファンから人気。グループの従業員数は約4200人、24年3月期の連結売上高は1484億円に上る大企業だ。
「物価上昇で洋菓子店では定番の苺のショートケーキは1個500円以上するのが当たり前になったなか、シャトレーゼの『スペシャル苺ショート』は税込でも300円台で“しっかり美味しい”といえるクオリティを保っている。人気商品の『チョコバッキー』は6本入りで324円(税込)と、食品スーパーと互角に勝負できるほど安い。リーズナブルで商品のバラエティーが非常に豊かなため、特に子どもがいるファミリー層にとっては非常に使い勝手が良いという点が人気の理由でしょう。シャトレーゼもそれを認識しているためかオーソドックスな商品が多いので、ものすごく特徴的なケーキやスペシャリティーが溢れたケーキを求める人からは選ばれにくいかもしれません」(デジタルマーケティング会社のプロデューサー)
100%防ぐことは不可能
そんなシャトレーゼの商品に虫が混入するというトラブルが起きた。一般的に食品工場での異物混入というのは、しばしば起きるものなのか。
「大手メーカーの食品工場の衛生管理は徹底されており、虫を含めて異物の混入というのは非常に起こりにくくなっており、年間に数億~数十億個の商品を出荷するメーカーでも年間で数件あるかないかというレベルです。今回問題となっている商品は、揚げるという高温処理を行う工程があるため、調理過程で虫が混入するというのは考えにくく、製造ライン上での運搬・一時保管・包装といった過程で起きた可能性が高いと思われます。いくら衛生管理を徹底していても、ヒトが出入りしたりモノを搬入する際には一時的にせよ外部と内部が空間的につながった状態になりますし、工場内には排水溝や排気口などがあるため、外部から虫が入り込むことを100%防ぐことは不可能です。また、製造機械の一部が落下などして混入してしまうということも確率論的にはゼロにすることは難しいです」(食品メーカー社員)
虫混入の連絡を受けた後のシャトレーゼの対応も注目されている。
「シャトレーゼほどの大企業が、購入者からの虫が丸々一匹入っていたという重大事故の連絡を無視していたとは考えにくく、連絡を受けてすぐに調査を行っていたと考えるのが自然ですが、大企業ゆえに連絡系統が複雑で、どこかで情報の伝達漏れや連絡の行き違いが生じてしまったり、調査がストップしたままになってしまったといったことが起きた可能性は考えられます。
一方で、通報者との窓口になった担当者が『工場と連絡がつかないから』という言い方を、なぜしてしまったのかは疑問ですし、対応としては不適切といえるでしょう。顧客からの問い合わせ窓口と製造部門の間の連絡ルートがしっかりと確立されていない可能性も考えられます」