また有名進学校でなくても都市部在住であれば、それぞれの受験ニーズに対応した塾や予備校という選択肢がいくらでも利用できます。

一方、これが地方公立校だと選択肢なんて日々の授業をこつこつやる以外にほぼないわけです。

東大とか医学部行きたかったら自分で赤本でも買って独学でやる以外にありません。教師に聞いたってそんな問題解けっこないですから。

そういう意味では、学校の成績だけで入学できる学校推薦枠は地方公立校の生徒にとっては非常に重要なルートだったりします。

一方、採用する側の日本企業の現場はどういった環境でしょうか。

メンバーシップ型雇用の日本企業では、採用時点では具体的な配属先は確定しておらず、配属後もローテーションで複数の職を経験する可能性が高いです。

日々の業務も会社都合で上から与えられたものをその都度こなしていくことが求められます。

重要なのは「会社から与えられた業務はなんでもどこででも何時まででもやる」という徹底した受けの姿勢ですね。だから“総合職”っていうんですよ。なんでもやるから。

一々「こんな仕事に意味あるの?」とか「自分の理想とするキャリアとは全然関係ないじゃん」なんて疑問を持っちゃいけないんです。

では、さきの2つの育成ルートで育ってきた人材、どちらがメンバーシップ型の組織にフィットするでしょうか。

最も合理的なプロセスを最短ルートで駆け抜けてきた進学校でしょうか。もちろんそういうタイプが活きる場面もあるでしょう。

でも多くの人事担当は、どこに配属されてどんな仕事を与えられても嫌な顔一つせずにこつこつこなしてくれるのは「授業で教えられた授業をコツコツこなしてそこそこの成績をとってきたバランス型の人材だ」と考えるでしょう。

そういうタイプが多いのが、地方で地域の秀才が集まる公立校ということですね。

要するに、公立校の一見すると非効率で何のためにあるのかわからないようなカリキュラムは、あれはあれで日本型雇用とマッチしているということです。