「何もしなかったら」という条件は、具体的に何をするのか言わない限り意味がない。図1のように移動量を「8割削減」した欧米では日本の数十倍の死者が出たのに、半分しか減らなかった日本では超過死亡マイナスの過少死亡だった。行動制限には効果がなかったのだ。

図1 各国の交通機関の移動量の変化(Apple Mobility Report)

初期に日本の被害が少なかった原因は、東アジアの人々にコロナ系のウイルスに対する(広い意味の)自然免疫があったからだと思われる。ところが厚労省はこの失敗を糊塗するために、このファクターXを検討もしない。

行動制限に効果がないことは多くの専門家も指摘したのに、政府は緊急事態宣言を繰り返し出し、多くの飲食店が廃業に追い込まれた。過少死亡でこんな行動制限をした国は日本以外にはない。

ワクチンは有害だったが無益とはいえない

2021年から状況は変わった。マイナスだった超過死亡が、ワクチン接種が始まった5月からプラスになったのだ。このときワクチンの副反応が疑われたが、結果的には図2のように接種数と超過死亡数には(2022年初を除いて)強い相関はない。

図2 超過死亡数とコロナ死者数とワクチン接種数(neko-inc)

ただ4.3億回のワクチン接種による(死亡一時金を支給された)死者は約600人で、予防接種の安全基準(100万接種で死者1人以内)をやや上回っている。そのリスクがゼロだと主張した河野大臣や医クラの主張は誤りである。

しかしワクチンの副反応だけでは、2020年以降の超過死亡数21万人は説明できない。ワクチンが重症化を防ぐ効果も、図のように多くの臨床試験で明らかだから、ワクチン接種は有害有益だったといえよう。

図3 ワクチンの臨床試験結果(東京新聞)

ただ図2でもわかるようにワクチンはオミクロン株にはほとんどきかなかった疑いが強い。特例承認は武漢株で行なわれたので、それと構造が大きく異なるオミクロン株にきかないことは驚きではない。

超過死亡の原因は医療資源配分のゆがみ

問題はこの害と益のバランスをどう考えるかである。単純にワクチン接種なしだったら死者が増えたか減ったかという基準で考えると、図2のように少なくとも2021年(デルタ株)にはワクチン接種で超過死亡は減ったと考えられる。

しかし2022年(オミクロン株)から感染者と死者が激増し、日本の超過死亡率は他の先進国より高くなった。この原因が最大の問題だが、ワクチン接種回数との相関は強くない。圧倒的に強いのはコロナ死亡率との相関で、

超過死亡数=コロナ死者数×3

という1次式が、2021年以降はほぼ一貫して成り立っている。つまり超過死亡は間接コロナ死だと考えてよいが、それはコロナ感染で死んだという意味ではない。先週の記事でも書いたようにコロナ感染者が激増し、スタッフや医療機材がそれに取られた医療資源配分のゆがみが原因と考えられる。

この現象は日本だけではなく、途上国でも超過死亡数がコロナ死者数を大幅に上回ったが、オミクロン株で超過死亡が増えたのは東アジアの特徴である。特に初期に死者の少なかった台湾や韓国の超過死亡率が、日本より高くなった。これは東アジアの人々がオミクロン株に免疫がなかったためと思われる。

図4 台湾と韓国の超過死亡率(Economist)

以上はネットに転がっているデータをもとにしたざっくりした総括だが、コロナ騒動を作り出した感染症学者がこの程度の総括もせず、「ワクチンで35万人の命が救われた」などというデマを流している。

ただこれを批判する人も反ワクチンにこり固まり、ワクチンの益を認める専門家を敵認定して攻撃するなど極左化している。行動制限とワクチンをわけて考え、有害無益な行動制限を繰り返さないことが大事である。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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