自民党総裁選の討論会の2日目のテーマは「社会保障・少子化」だったが、まったく無内容で時間の無駄だった。

小林氏は医療DXがなんちゃらとテクノロジーの問題に逃げ、高市氏は成長すれば何とかなるといい、石破氏は何も言ってない。みんな「この問題からは逃げたい」と顔に書いてある。

河野氏だけが「10兆円の仕送り」問題に向き合っている

ただ一人、意味のある答を出していたのは河野太郎氏(57:40~)である。日本の社会保障の最大の問題は、彼が指摘するように「健康保険料の4割が高齢者に取られている」ことであり、この後期支援金とか前期調整額と呼ばれる「仕送り」は毎年10兆円に及ぶ。

厚労省の資料

これは保険料ではなく、河野氏も指摘するように「税金」であり、それが税法上の根拠なく強制的に徴収されているのは財産権の侵害である。これを是正するには、高齢者の負担増が避けられない。それを指摘したのは彼だけで、他の候補は沈黙していた。

他の候補も言及していたのは応能負担、つまり所得や資産に応じた負担増である。これは現在の老人医療でも導入されているが、10兆円の仕送りをそれだけで埋めることはできない。医療費は応益負担が原則なので、これは最低保障年金のクローバックでやったほうがいいと思う。

まず必要なのは、窓口負担を一律3割とし、高額療養費や保険料の年齢差別も廃止することだ。これだけで5兆円浮くが、あと5兆円の財源が難問である。

一つの考え方は、河野氏もいうように税として徴収することだ。これを消費税でまかなうと5%の増税が必要だが、その代わり健康保険料が4割下がるので、現役世代の手取りは増える。当面はつなぎ国債を発行して、徐々に増税(保険料減額)してもいい。

国家百年の計を考える「政治家」か老人票のほしい「政治屋」か

いずれにせよ、毎年10兆円が保険料でも税でもないあやしい制度で徴収されているのは法治国家として許しがたい事態である。貯蓄率の高い高齢者への巨額の所得移転が、現役世代の手取りの減少や消費低迷の原因ともなっており、これは政府が100%是正できる問題である。