もちろん、慣れた職場、親しくなった従業員仲間との別れは辛いものがありますが、昔のように「同じ釜の飯を食った戦友」というウェットな感じもなく、「またいつかどこかで…」ぐらいのものでしょう。また、肩たたきにあったとしてもそれが個人の能力を直接的に意味しているわけではなく、全社的、あるいは事業単位としての処遇ですのでむしろ、チャレンジ精神旺盛で今まで培ってきたスキルを活かせるという前向きの展開になると考えています。
カナダで32年、雇用関係もずっとやってきた中で思うのは会社と従業員は極めて対等な関係である、という点です。従業員の権利もしっかり守られていますが、義務=雇用条件に満たす業務遂行能力がなければ「クビ!」を言い渡されるのも従業員は覚悟の上だということです。特にカナダの場合、雇用初めの3か月は試用期間で雇う方も雇われる方もノーペナルティで雇用契約を破棄できます。よって経営側も2か月目頃に部門の上司や人事などと内部レビューを行うケースが多く、要注意マークないしフェイル(失格)となった新規採用者は3か月目で「悪いけどうちの会社とは相性が悪いようだね」とあっさり契約破棄をします。非常にドライです。
言われた方もあっさりしたもので、「わかりました」で終わります。では本人は傷つかないかといえばそれが社会のルールだという認識を持っているので「また探すさ」ぐらいのオープンマインドです。つまり、なんで俺はだめだったのだろうとグズグズせずにさっさと気持ちを切り替える術があるということです。これはどの人もそれなりに自分の自信があり、スキルがあり、売り込むものがあるということです。誰かが俺のことを見出してくれるさ、というバックグランドがあるというのが大事です。
よって日本でリストラが当たり前のように行われる時代となったならば従業員は十分なスキルを身に着けることが求められるのです。昔は社内営業に長けた人、社内情報に長けた人、社内技術に長けた人など組織内能力に秀でた方が多かったと思います。これからは組織外能力、つまり誰もが欲しがる私のチカラを売り込めるようにすべきでしょう。これがこれからの社会人人生を生き残る術だと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月19日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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