このように設計されたバイオハイブリッドロボットは、菌糸体の中で生じる自然な信号(電位変化)を感知し、その信号に応じてて歩くことができます。
この状態では、菌糸体から得られる情報をただ読み取ってロボットの歩行に反映させただけですが、研究では、菌糸体が受ける外部刺激によって歩行を変化させることにも成功しました。
ペトリ皿の菌糸体に紫外線を照射することで、電気生理学的活動が変化。ロボットの動きや軌道も変えることができたのです。
このことは、菌糸体を用いたバイオハイブリッドロボットが、環境の変化を読み取って対応できることを示しています。
また別の実験では、ロボットを手動で操作することを想定し、菌糸体からの信号を完全に無効にするテストも実施。見事成功しています。
さらに、ペトリ皿を装備した車輪付きロボットも開発され、いわば「キノコが運転する車」が動くことも示されました。
ちなみに今回の研究で利用された刺激は紫外線だけでしたが、研究チームによると、将来的には、複数の刺激による入力を組み込むことが可能だという。
この推測は、「生体システムは、光・熱・圧力などの複数の刺激に反応するのが得意である」という事実から来ています。
従来のロボットは、複数の刺激に対応するために、複数のセンサーを装備しなければいけませんが、バイオハイブリッドロボットであれば、1つの生体部品だけで様々な刺激に対応できる可能性があるのです。
研究チームによると、将来のバイオハイブリッドロボットは、まるで生物のように土壌に関する複数の情報を感知し、肥料を追加する時期を決定することなどが可能かもしれません。
まだまだ発展途上な分野ですが、今回の菌糸体ロボットは、将来の道筋をいくらか示してくれました。