タレントの羽賀研二容疑者が9月25日、強制執行妨害などの疑いで愛知県警に逮捕された。その際、共謀したとして暴力団組長ら6人も逮捕されたが、そのなかに日本司法書士会連合会(日司連)の副会長が含まれていたことが波紋を広げている。日司連は翌日、会長談話を発表したが、その内容に疑問の声があがっている。そこで、問題点を整理してみた。

 9月25日、タレントの羽賀研二容疑者(本名:當眞美喜男)が、強制執行を免れる目的で不動産の虚偽登記をしたなどとして、強制執行妨害などの疑いで逮捕された。羽賀容疑者は、過去に関わった詐欺事件で、被害者に対して約4億円を賠償するよう命じられている。だが、差し押さえを逃れるために、自身の所有する沖縄県内のビルと土地を、羽賀容疑者が代表を務める会社に所有権を移す、虚偽の登記をしたとして、強制執行妨害や電磁的公正証書原本不実記録などの疑いを持たれている。

 実は、羽賀容疑者は2020年にも、強制執行を逃れるために当時の妻と偽装離婚をして、その元妻に不動産の所有権を移す虚偽の登記をしており、実刑判決を受けている。だが、その際に関わった弁護士や司法書士は罪に問われていない。今回の登記と何が違うのか。

 2020年の強制執行逃れの登記を行った際には、羽賀容疑者は地元の弁護士に繰り返しアドバイスを求めていた。そこでは、羽賀容疑者が偽装離婚するとのアイデアに対し、弁護士は「やめたほうがいい」と忠告し、「責任を負わない」と念を押したうえで離婚関係書類を提供したという。さらに、事情を知らない司法書士に虚偽の登記申請を「させた」と判決文では明らかになっている。裏を返せば、今回、司法書士が逮捕されたということは、警察は司法書士が事情を知ったうえで関与していると判断したといえる。

 司法書士としては、不実の内容が含まれている疑いがあれば、登記を申請するべきではない。司法書士会連合会の副会長であれば、当然、それは認識している。では、虚偽の登記だとわからなかった可能性はあるだろうか。

 今回、羽賀容疑者が所有権移転の登記を行った不動産を見ると、目黒区や東京都、財務省、沖縄県北谷町など何度も差押をかけられているほか、財産分与で元妻に所有権を移転した後、さらに羽賀容疑者が買い戻したりしている。加えて、暴力団関係者の会社が抵当権を設定しており、司法書士であれば疑いを持たないはずはない。

 また、所有権の移転先である羽賀容疑者の会社についても、設立登記を行ったのは、同じ司法書士であると報じられている。つまり、状況的にみて、司法書士が事情を知らずに登記したとは考えにくい。

司法書士会連合会の現役副会長が逮捕の衝撃

 件の司法書士、野崎史生容疑者は日本司法書士会連合会(日司連)の現役の副会長だ。司法書士は“町の法律家”を標榜し、弁護士よりも身近な法律の専門家という立場で、近年では判断能力の衰えた高齢者や障がい者をサポートする成年後見や、簡易裁判所の訴訟代理、民事信託など、市民の日常生活を助ける役割を拡大させている。

 司法書士は、各都道府県に設置されている司法書士会に登録しなければ司法書士業務を行うことができない。つまり、司法書士会は強制加入団体である。その司法書士会を束ねるのが日司連で、司法書士会員2万3156人(4月1日時点)の頂点ともいえる。その副会長の野崎容疑者が、本来の主業務である登記において不正を働いたため、日司連は「極めて重大な事態」との会長声明を発表し、謝罪した。

「昨日、当連合会の野﨑史生副会長が強制執行妨害や電磁的公正証書原本不実記録などの疑いで逮捕されたとの報道がありました。

 被疑事実の有無については今後の捜査を待つことになりますが、報道内容が事実であるとすれば、そのような行為は到底許されるものではなく、極めて重大な事態であると厳粛に受け止めています。

 当連合会の役員から逮捕者が出たことは誠に遺憾であり、国民の皆様に不安を与えたことにつきお詫び申し上げます。

 当連合会としては、捜査に協力しつつ、情報収集に努めてまいります。また、事実を確認の上、厳正に対処するとともに、今後も司法書士制度に対する国民の皆様の信頼確保のために全力で取り組んでいく所存です」(会長談話「日本司法書士会連合会HP」より)