脳は信号、これが重要です。私は門外漢ですのでそれを説明しているウェブを見ると「脳が働くときには、神経細胞の樹状突起から細胞体をへて、軸索を通り、次の樹状突起へと電気信号が流れます。 このようにして電気信号が神経細胞ネットワーク上を流れていき、情報が伝えられる仕組みになっています」(日本学術会議)と解説されています。その信号を人間の作るディバイスを経由させれば考えていることを外部装置に移行することができるという原理でしょうか?
そしてこういう技術にすぐ飛びつくのがイーロンマスク氏で彼はニューラリンク社を立ち上げ、治験を始めています。また、同社とともに先行するシンクロン社はすでに小規模の治験を実施済みで次の段階として数十人規模の治験を行う募集を開始と日経が報じています。
この話、すごいのですが、難関はあります。まず、ディバイスを埋め込むのは脳の中。つまり頭を手術しなくてはいけません。頭蓋骨の中ですから。問題は装置ですので永久不変ではないのです。あるいは壊れたらどうするのか、という問題もあります。その度に脳の手術をするのは面倒だから頭の中に開閉式のハッチでも作るのでしょうか?こうなるともはやロボットの世界で人間の話をしているとは思えなのです。
ではマスク氏が語る「最初のプロダクト名はテレパシーだ」は本当に人間社会に必要なのか、と言われたら私はわからないのです。思っただけで物体を動かせるというテレパシー技術は90年代初頭には実証されています。つまりそんなに新しい技術ではないのですが、それを具体化させるのに30年以上かかっているということです。それは上述の3つの技術の発展があったからこそなのですが、人間社会においてテクノロジーだけが独善的に進化しているように思えるのです。
人間はもっとアナログ的で深みがある難解な問題をたくさん抱えています。社会の動乱や戦争、政治や体制、歪みやストレスや精神障害、人間関係やコミュニケーションの欠如などテクノロジーとは無縁の世界だけど人類の歴史でほとんど進化していない問題に常に直面しているのです。これを思うと「テレパシーもいいけど、もっと身近な問題はどうするのだろう」と思ってしまうのです。
もちろん、私はアンチテクノロジーではありません。むしろウェルカムなのですが、テクノロジーの進化とともに人間そのものが退化していないか、という気もするのです。つまり、外部装置に依存することで人間が本来持ち合わせている能力を使い切っていないという感じです。例えは悪いですが、我々には十分な記憶装置の容量が残っているのにクラウドのメモリーを使うため、それを引っ張り出さないと自分で何もできない人になっているのです。例えばあなたは家族の人の携帯番号を頭の中で覚えていますか?90%の人は覚えていないでしょう。それならば何もない脳みそからテレパシーってなんか不思議だよね、と技術がわからないおっさんがつぶやいているということであります。
失礼しました。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月21日の記事より転載させていただきました。
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