一般企業への就職も困難を極めます。懲戒解雇の場合は「罰有り」と記載しなければいけません。刑事罰に当たらない限り、「罰有り」にならないとする専門家の意見があります。
筆者はこれまで、いくつかの労働審判や労働委員会に出席したことがありますが、重責解雇の場合は「記載すべき」とする専門家もいますので解釈がわかれるところです。
重責解雇とは労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇です。その場をうまくしのいだとしても、告知義務違反として経歴詐称で解雇理由に該当する場合があります。どんなに優秀でも、「罰有り」の人材を採用する会社は少ないでしょう。
解雇規制の緩和をどう考えるか経済界からは「解雇規制の緩和」という根強い要望があります。具体的には「1年分程度の基本給を支払うことで金銭解雇を認める」という方法が検討されています。これには慎重な意見が見られ、反発する声も目立ちます。
労働審判などを経て得られる解決金はどの程度でしょうか。労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、労働審判における解決金額の平均値は229万7119円、中央値は110万円とされています。
日本の企業群のなかで中小企業の占める割合は99.7%。その中小企業にとって、退職してもらいたい人に1年分の給与を支払うことは大きな負担ですが、それでも現状では、労働裁判に訴えた人が、勝ち取れる解決金は年収の半分にも満たない金額だということも現実です。
とはいえ、日本には労働三権が存在し、日本国憲法第28条にその規定が設けられています。「解雇規制の緩和」には、これらの労働基本権との整合性が重要になってくることは明白であり、さらなる国民的な議論が必要になると思われます。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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