それだけではない。3月28日、北朝鮮に対する制裁決議の実施を監視する国連安全保障理事会専門家パネルの任期延長に関する決議案が、安保理理事国の過半数の支持にもかかわらず、ロシアの拒否権によって否決された。北朝鮮はロシアを味方につけている限り、国連安保理での対北決議案をもはや恐れる必要がなくなったわけだ。中国共産党政権が金正恩総書記のロシア急傾斜を懸念してきた、という情報も頷ける(「中国『金正恩氏のロシアへの傾斜』懸念」2024年3月26日参考)。

ロシアはイランから無人機を獲得し、兵力、武器不足に悩むウクライナ軍に対し攻勢に出てきている。イランは今月13日から14日にかけ、イスラエル軍の在シリアのイラン大使館空爆に対する報復攻撃で数百の無人機、弾頭ミサイルをイスラエルに向かって発射したが、イランのミサイルや無人機に北朝鮮製部品が使用されている疑いが表面化している。また、パレスチナ自治区ガザを2007年以来実効支配しているイスラム過激テロ組織「ハマス」がイスラエル軍との戦闘で使用している武器には北朝鮮武器、部品が見つかっている。そして「ハマス」を武器支援しているのがイランだ。イラン・北朝鮮・ハマスの3者がつながるわけだ。なお、朝鮮中央通信(KCNA)が24日報道したところによると、尹正浩対外経済相を団長とする北朝鮮代表団がイランを訪問している。

ところで、北朝鮮とイラン両国は弾道ミサイルと核技術分野で協力しているのではないかという噂が絶えない。イランで外相や原子力庁長官などを歴任したアリー・アクバル・サーレヒー氏が駐ウィーンIAEA(国際原子力機関)担当大使だった時、当方は「イランは北朝鮮と核関連分野で情報の交流をしているのか」と尋ねたことがある。すると大使は侮辱されたような気分になったのか、「私は核物理学者としてテヘラン大学で教鞭をとってきたが、北の科学技術に関する専門書を大学図書館で見たことがない。核分野でわが国の方が数段進んでいる」と強調し、ミサイル開発分野での北朝鮮との協調については「知らない」と答えたことを思い出す。

聯合ニュース日本語版は17日、「米国防総省傘下の国防情報局(DIA)が2019年に公表した報告書によると、イランの弾道ミサイル『シャハブ3』は北朝鮮の中距離弾道ミサイル『ノドン』を元に開発され、『ホラムシャハル』は北朝鮮の中距離弾『ムスダン』の技術が適用された。国情院は今年1月、イスラム組織ハマスが使用した武器の部品にハングルが書かれた写真を公開し、ハマスが北朝鮮製の武器を使用しているとの分析を明らかにした」と報じている。

ちなみに、イランは今日、ウラン濃縮活動を加速し、核兵器用の濃縮ウラン製造寸前まできている。ロシアから核開発で技術的支援を受ければ、イランの世界10番目の核保有国入りは時間の問題だろう。ロシア・イラン・北朝鮮の3国の独裁専制国家が核・ミサイル開発で手を結び、核保有国となった日、米国を中心とした西側同盟は大きな危機に遭遇する。中国共産党政権が3国の軍事同盟に加わり、西側に挑戦状を突きつければ、世界は文字通り、新「戦国時代」に突入する。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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