ワークマンが女子向け商品へ展開を見直し、男性向け商品に注力すると報じられ、話題になっている。コロナ禍を経てキャンプブームが湧き起こり、キャンプをする女性が急増。そのなかで「低価格・高機能」を売りにするワークマンの商品は人気が高まった。その人気に乗るようにワークマンは、女性向け商品やキャンプ用品を急速に拡大させたが、ここにきてキャンプブームが失速。呼応するようにワークマンは女性向け商品の見直しを余儀なくされている。だが専門家は、キャンプブームが失速したことだけではなく、ワークマンの店舗運営に問題があると指摘する。
低価格かつ高機能性を両立させる作業服で圧倒的な人気を誇るワークマン。総合スーパー「ベイシア」、ホームセンター「カインズ」などを擁するベイシアグループに属し、現場作業や工場作業向けの作業服や、作業関連用品の専門店として、日本最大手である。会社組織としても徹底的に無駄を省き、高い収益性を実現させている。
2018年にカジュアル色を強めた「WORKMAN Plus」、2020年には女性向けブランド「#ワークマン女子」など、従来の“現場作業の男性向け”だけではない業態も展開し始めている。いずれも低価格・高機能は維持し、高いコストパフォーマンスを実現している。
だが、そのワークマン女子に陰りが見え始めた。そもそもワークマンの女性人気が高まったのは、コロナ禍で巻き起こったキャンプブームが発端だ。キャンプをする際のアウトドア用品は、どのブランドでも軒並み高額。そのなかで、アウトドア専門ではないものの低価格ながら高機能なワークマンの商品が口コミで広まっていった。そのキャンプブームが収束しはじめ、ワークマン女子も低迷し始めたという流れである。その波はワークマン女子に限らず、世界中のアウトドア・キャンプ用品ブランドでも同様である。
ワークマンの店舗運営における問題点
それでも、アパレル業界でトレンドリサーチやコンサル事業などを手がけるココベイ社長の磯部孝氏は、キャンプブームの終焉のみならず、ワークマンの店舗運営のシステムにも問題があると指摘する。
「ワークマンは、“ワークマン女子”をブームにしたわけですが、ブームはいつかは下がります。そのブームのときに固定客をつかまえきれなかったことが大きな要因ではないかと思います」(磯部孝氏)
低価格・高機能で人気は得ていたと思うが、リピーターを獲得するには至らなかったということか。
「ワークマン女子の既存店ベースの売上高が伸び悩んでいるところを見ると、多少の固定客はつかんだとしても、1回や2回で購入をやめてしまった客が多いのではないでしょうか」(同)
その要因はデザイン性など、商品にあるのだろうか。
「デザイン的な要因もあると思いますが、もっとも大きいのはフランチャイズ制度にあると考えています。フランチャイズは非常に繊細な運営が求められます。ワークマンとしては、店舗のオーナーに商品を“買い取ってもらう”という立場です。オーナーとしては在庫を抱えたくないので、大量購入は避けたいところですが、そうすると人気商品は早々に店頭から消え、売れ残り商品ばかりが並ぶ、という状況が起きやすくなります。
これは少し極端な例ですが、フランチャイズの店舗運営は非常に難しいのです。現在、ワークマンがユニクロやしまむらなどの競合と大きく異なるのは、店舗運営のシステムの違いです。ワークマンの顧客が定着しにくい一つの要因は、フランチャイズ運営が多いことが挙げられるのではないかと考えています」(同)
例えばPOSなどで商品の売れ行き予測をすることによって在庫管理はできるのではないだろうか。
「システムやAIを活用することで需要予測は可能ですが、その精度が問題になってきます。精度が高ければ品切れなどのリスクは低減できますが、低ければ予測が外れ品切れや在庫過剰などの問題が起きる可能性があります」(同)
そうすると、店舗運営における振れ幅大きさは、ワークマン女子に限らず、ワークマンのグループ全体にいえることなのだろうか。
「おそらくワークマン全体だとは思いますが、特に『♯ワークマン女子』と銘打った店舗の業績が顕著に下がっているのだと考えられます。ワークマン女子は固定客をつかまえられなかったわけですが、元々ワークマンは現場作業員を中心とする男性が固定客です。女子のみならずキッズやシニア向け、さらには寝具なども取り扱っていますが、既存のビジネス以外にもターゲットやカテゴリを広げるのはリスクになっているように思えます。それぞれの分野には商品開発や販売のノウハウがあり、カテゴリを増やしたからといって顧客層が広がるというものではありません。そこで、原点回帰としてワークマンは男性客向け商品に注力することにしたのだと思いますし、私もそれがいいと思います」(同)