そして顧客との対話も生まれたのです。

つまり持っていた道具は全く同じなのに、視点を変えることによって何倍も稼げるようになった、そしてそれはちょっとした想像力さえあれば、簡単に予想できることだったのです。

自分が相手の立場にたって、ほんの少し、どんな状況でツールを使っているかということを考えれば、何が喜ばれるかなと言う事はわかったわけです。

このようなインプレゾンビの体験はどうしたら途上国のビジネスがもっとうまくいくようになるかと言うことだけではなく、私たちにも様々な気づきを与えてくれます。

つまりビジネスの最も大事な成功要因と言うのは「相手のことを考えることができる」と言うことです。

それに必要なのは、相手の心を理解するだけではなく、異なった生活環境や仕事の人、年齢、性別の人の状況を知り、どんな気候か、どんな経済レベルか、どんなものが流行っているかといったことを当たりをつけて調べ、仮説を立て、証明するデータを収集し、相手に喜ばれそうなメニューや製品コンテンツを投入して反応を見て、結果が良い感じであれば、さらに良いものを提供する、いまいちであれば方向を修正していくと言うことを繰り返していくと言うことです。

このサイクルを割と真面目に回していたのが最近話題になった「いただきりりちゃん」であり、彼女のような結婚、詐欺や交際詐欺を行う人々と言うのは、お客さんの心を理解し、求めているものを提供することができたので、対価を得ることができました。

自分本位ではなく、徹底的な顧客主義にならなければ稼ぐ事はできません。

ただし、そこにはお客を絞り、本当にそのお客さんが求めていることを提供すると言ったターゲティングも重要になってきます。これを大学の経営学部やビジネススクールでは何百万円も払って勉強したりするわけです。しかし例えば地元で長年ラーメン屋をやっている方や、クラブを経営している方たちは、それを感覚として理解しているわけです。

そしてこれは日本がなぜアニメやゲームの世界では他国よりもずば抜けているかと言うことにつながってきます。

日本人は人のことを気にしすぎると批判されることもありますが、それはつまり他の人がどう思うのか何をしたら喜ぶかと言うことを常に考えているということです。

ユーザーや読者が喜ぶキャラクターをデザインし、ストーリーを描き出します。

そして日本人が作り出したものは日本だけではなく、北米や南米、中東欧州アフリカでも大人気です。ナイジェリアや今後でさえドラゴンボールやポケモンは大人気なのです。

ところがアジアの他の国が日本と文化が近いはずなのに、世界的に人気になるアニメやゲーム漫画を生み出せていません。

日本のものを真似した作品はありますが、あくまで二次創作に近いレベルにとどまっています。

これはやはり彼らが非常に自分本位でユーザや他人が求めることを決め細かく想像しないからと言うことに尽きるのではないかと思います。

【参考記事】

「日本の生活の余裕」と「途上国の厳しさ」の実態を日本人は何も知らない 谷本 真由美 『インプレゾンビ』からわかる先進国と途上国のSNSの違い 谷本 真由美 途上国の人が『インプレゾンビ』になる理由を日本人は何も知らない 谷本 真由美 「日本の不動産は海外と比べてどれだけ安いか?」を日本人は何も知らない 谷本 真由美 テレ朝『ポツンと一軒家』に感じる日本人の危機意識のなさ 谷本 真由美