そもそも、アジアにおいて日本は他に例を見ないほど特殊な存在だ。人種面では、中国、朝鮮族と身体的に似たところがあるが、遺伝学的にはまったく違う。宗教的には、仏教、神道、キリスト教などが混交する多神教だ。文化面では、漢字、ひらがな、カタカナと3種の文字を使う世界でも稀有な文字文化を持つ。民族性では、伝統を重視しながらも新しいものを積極的に取り入れる進取の気性があるなど、他に類似する国は見当たらない。
例えば、米国が宗教、文化などで類似性を持つ欧州諸国などと同盟を結んでいるのとは対照的だ。もともと同盟国や同志国に恵まれていないことは、これまで他国と連携して敵対国と対抗した歴史がほとんどないことからも分かる(日清、日露は日本単独の戦い、第2次世界大戦でも三国同盟は軍事同盟でありながら、実際にはほとんど軍事面で共同して戦ってはいない)。
確かに日本のバックにつく米国のシーパワーは強大なものだが、米国内部の分断が際立っている現在、米国が核戦争を覚悟してまで日本を全面的に助ける可能性は低い。実際に米国の政府関係者は「中国に日本の尖閣諸島が奪われたからと言って、米軍が中国との全面戦争のリスクを冒してまで軍事力を行使することはありえない」と述べている。今までの米国一国に頼った安全保障政策は極めて危うい。
今、日本は「自由で開かれたインド太平洋戦略」という枠組みの中で、米国、韓国、フィリピン、オーストラリアなどと準軍事的な同盟を実現することを目指している。さらに英国をはじめとするNATO諸国もこの枠組みに加わり、こうした軍事面を含む国際的な取り組みを主導するのは戦後初めてのことだ。
ただし、この枠組みに加わるアジア諸国には様々な問題がある。例えば、韓国では現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が日米と協調しているが、このような保守的な政治力が長続きするかどうかは疑問符がつく。実際、現在の国会は野党が多数党となっており、再びムン・ジェイン政権のような親朝的で反日的な政権が生まれる可能性も否定できない。