また、日本で前科があると、米国で入国拒否されることがあるが、そのおそれもなくなる。日米という「世界最強の旅券」を使い分けることで、第三国でも有利な立場になれる。日米両国の社会保障制度も使えるし、教育費でも優遇され、家族を米国に呼び寄せることもできる。

両国の選挙で投票するだけでなく、候補者になったり国会議員になったりすることも、理屈上、不可能でない。

一方、ベトナム戦争のようなことが起きれば、兵役に取られる可能性がゼロではないし、税金や社会保障の手続きを要求される恐れはある。

実際にフランスで、米国生まれの二重国籍の人が、納税者番号の登録をしていないことを理由に金融制裁の対象となり、フランスの銀行から融資を差し止められたことがある(銀行が米国政府からの制裁対象になるため)し、同様のことが日本人の二重国籍者に起きるかもしれない。

それでは、国にとって二重国籍のメリットはあるのかというと、権利・義務関係を複雑にするし、参政権や旅券の二重行使、テロ対策、税金徴収、社会保障の管理などで不都合を来す。

ただし、スポーツなどで日本代表とする、もしくは、発展途上国や国際的な制裁を受けている国の国民で専門技能を持っている人に日本で働いてもらう場合は、二重国籍が有効な手段となる。韓国はこの観点から例外的に二重国籍を認めている。

また、一定の金額を払ったり投資したりすれば、国籍や永住権を与えることもある。香港返還のころには、カナダなどが金持ちの香港市民を誘致した。

しかし、国籍取得には、忠誠義務を確認するのが普通だ。「心は外国人のままだが、日本の旅券を持っている方が便利だから帰化した」というのを許すのは異常だ。

外国生まれや両親の国籍が違う人については、国籍選択の強制を原則にしつつ、例外的に猶予を与えるとか、日本国籍を失っても不便が少ない特別の制度を設けたらいい。ただし、猶予した場合は、選挙権の行使や旅券の発効や使用に厳しい条件を付するのが筋だ。

前述の通り、中国は二重国籍を認めていないし、韓国も通常は認めない。一方、台湾は認めており、北朝鮮は不透明な状況だ。

これら4つの国・地域は厳しい忠誠義務を課したり、反日教育もしている。さらに、中国政府は国民に反日行為となりかねないことを強制できる。将来、中国や韓国が二重国籍を認めるようになった場合でも、日本がそれらの国との二重国籍を認めるのは慎重にすべきだ。