毎年初夏の新潮選書フェアに合わせて、谷沢永一『人間通』(1995年)の書評を書きました。初出は同社のPR誌『波』の6月号ですが、Web上でもこちら(Book Bang)で全文が読めます。

びっくりしましたが『人間通』、新潮選書としてはNo.1の部数を誇り、(一時出ていた)文庫版と合わせて40万部も売れてるんですね。いいなぁ。

僕も最近は人間や人生に役立つ本を書いてるつもりなので、それくらい売れてほしいです。むかし担当して下さった編集者さんも拾ってくれたように、人生の方が歴史よりも長く豊かなので、歴史の本の売り上げはソコソコでもいいですから。

斎藤環さんと出した拙著も同じ新潮選書。どうぞよろしくお願いします

……そういうわけで、谷沢さんの本の書評でも人生を大事にして、歴史の方はぶっちゃけ端折っちゃったので、ちょっと補足。

読書通の書誌学者として、また罵倒芸が名物の「右派」の論客として鳴らした谷沢永一は、1929年生まれ。この世代の学者というと、私としてはなんといっても網野善彦(28年生)になりますが、つまり渡邉恒雄さん(26年生)とかのチョイ下ですよね。

「戦中派」と呼ばれる世代の最下限で、徴兵適齢期には「もう負けが見えていた」(ないし負けて徴兵されずにすんだ)人たちになります。当時互いに顔見知りだったナベツネさんと網野さんの戦争体験は、前に言及した文章がWebでも読めます。