しかし研究チームは今回、アオウミウシの一生のライフサイクルやそれに伴う体の変態を明らかにすべく、室内での飼育実験を試みました。

飼育成功によりライフサイクルの全貌が明らかに!

チームはまず、野外での観察と飼育下での食事行動の記録によって、アオウミウシの成体の餌となる海綿動物を特定しました。

次に、この海綿動物を用いてアオウミウシを飼育したところ、複数の卵が塊状になっている「卵塊」を得ることに成功しています。

産卵から約6日後、1つの卵塊から数千匹以上のアオウミウシの幼生(体長わずか0.1ミリ)がふ化しました。

左:アオウミウシの産卵、右:ふ化した幼生たち
左:アオウミウシの産卵、右:ふ化した幼生たち / Credit: 筑波大学 – アオウミウシを卵から成体まで育てることに世界で初めて成功(2024)

これらの幼生を飼育容器の中で微細藻類を与え続けたところ、約3週間ほどで「眼点」の形成が確認されています。

さらにこの段階で、成体の餌である海綿動物と同じ容器に入れると、幼生は浮遊生活をやめて底生生活に移行し、それまで持っていた小さな殻を脱ぎ捨てるなどの「変態」を始めたのです。

こうして「幼若体(ようじゃくたい)」となったアオウミウシは、大人と同じ海綿動物を食べながらスクスクと成長。

この過程で、おなじみの青や黄色からなる鮮やかな体色模様を完成させ、触覚やエラ、肛門といった主要な器官を形成させました。

9つのステージに分けられる!

チームはこうした外見上の変態にもとづいて、アオウミウシのライフステージを9つに分類できることを突き止めました。

まず変態期として、浮遊〜底生に移行して貝殻を脱ぎ捨てる「M1」と、触覚の形成が始まる「M2」があります。

その後、幼若体は体色や器官の形成に応じて、J1〜J7に分類されました。

J1では触覚を動かせるようになり、海綿動物を食べるときに用いる「骨針(こっしん)」が形成されました。

左上:眼点ができた幼生、右上:骨針の形成(J1)、左下:外套膜腺の形成(J5)、右下:海綿動物を食べる個体(J5)
左上:眼点ができた幼生、右上:骨針の形成(J1)、左下:外套膜腺の形成(J5)、右下:海綿動物を食べる個体(J5) / Credit: 筑波大学 – アオウミウシを卵から成体まで育てることに世界で初めて成功(2024)