スパコンのシミュレーションが「スーパーダイヤモンド」の生成条件を示す
BC8は、8つの原子からなる結晶であり、周期表で炭素のすぐ下にあるシリコンやゲルマニウムでは、既に生成されています。
そこでオレイニク氏ら研究チームは、それらの元素でBC8が生成されるための知識を利用し、炭素でBC8を生成するために何が必要か調べるためのコンピュータモデルを作成しました。
これには非常に膨大な計算が必要となりますが、彼らは世界初のエクサスケール(1秒間に100京回の演算)スーパーコンピュータ「フロンティア(Frontier)」を使用することで、生成シミュレーションを行うことができました。
その結果、チームはBC8のスーパーダイヤモンドの生成条件を予測することに成功しました。
彼らによると、BC8が生成されるのは、高圧・高温の狭い条件の中だけだという。
具体的には、6000K(約5727℃)の温度と、1050GPaの圧力が必要になると予測されています。
上図から分かる通り、さらに圧力を高めていくと、生成可能な温度の幅はいくらか広がると考えられます。
そして生成されるBC8のスーパーダイヤモンドには、通常のダイヤモンドに見られる「へき開性(一定の面に沿って割れやすい性質)」が無いとも考えられています。
ダイヤモンドは非常に硬く傷つきにくいことで知られていますが、実はこのへき開性により、靭性(粘り強さ)はそこまで高くなく、ハンマーなどで叩けば比較的簡単に割れます。
スーパーダイヤモンドでは、いわばその弱点すら解消されると考えられており、研究チームによると、「これを作るには膨大な費用が掛かるだろうが、その強靭性は計り知れないほど貴重なもの」です。
では、実際にシミュレートされたスーパーダイヤモンドを生成することは可能なのでしょうか。
地球上の装置で、スーパーダイヤモンドを生成できるかどうかはまだ分かりません。
しかし、研究チームは、「炭素が豊富な太陽系外惑星には、スーパーダイヤモンドが存在する可能性がある」と述べています。
最近の観測では、炭素を豊富に含む太陽系外惑星の存在が示唆されています。
それらの天体はかなりの質量であり、その内部の炭素は膨大な圧力にさらされている可能性があるというのです。
遠く離れた惑星には、もしかしたら天然のスーパーダイヤモンドが眠っているのかもしれませんね。
参考文献
Supercomputer simulations of super-diamond suggest a path to its creation
Supercomputer Cracks How To Create Material Harder Than Diamond: The “Super Diamond”
Rare ‘super-diamonds’ may already exist on other planets, and could be made on Earth, study hints
元論文
Extreme Metastability of Diamond and its Transformation to the BC8 Post-Diamond Phase of Carbon
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。