ダイヤモンドといえば、「非常に硬い物質」として有名です。

これはダイヤモンドを構成するそれぞれの炭素原子が結び付きの強い構造で配列されているからです。

そして理論的には、この炭素原子の配列を変更することで、さらに硬い材料が作れると考えられています。

最近、アメリカのサウスフロリダ大学(USF)に所属する物理学者イヴァン・オレイニク氏ら研究チームは、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより、ダイヤモンドよりも圧力に対して30%高い抵抗力を示す「BC8」と呼ばれる構造の生成条件が判明したと報告しました。

「スーパーダイヤモンド」とも言えるこの物質は、非常に高い温度と圧力の中で生成されると考えられており、他の惑星では「既に存在しているかもしれない」とのこと。

研究の詳細は、2024年1月25日付の科学誌『Journal of Physical Chemistry Letters』に掲載されました。

ダイヤモンドを越える「スーパーダイヤモンド」

ダイヤモンドにおける炭素原子の構造
ダイヤモンドにおける炭素原子の構造 / Credit:Wikipedia Commons_ダイヤモンド

ダイヤモンドの硬さは、炭素原子同士が作る共有結合に由来します。

各炭素原子が、原子間での電子対の共有を伴う結合により、隣接した原子と非常に強く結び付くのです。

つまりダイヤモンド特有の炭素原子の構造や配列が、その硬さを生み出していると言えます。

鉛筆とダイヤモンドは炭素原子だけで構成されていますが、硬さに大きな違いがあるのはそのためです。

炭素原子の構造の違いにより、硬さにも違いが生じる
炭素原子の構造の違いにより、硬さにも違いが生じる / Credit:Canva

ダイヤモンドは上記の理由で炭素原子の結び付きが非常に強く、簡単には削れません。

しかし鉛筆では、構造的に炭素原子の結び付きが弱く、力を少し加えるだけで簡単にほどけてしまいます。

鉛筆では、炭素原子の結び付きの弱さを利用して、紙に字を書くことができるようにしているのですね。

炭素原子の構造の違いで硬さが異なるのであれば、様々な構造を探求することで、ダイヤモンドよりもはるかに硬い構造を発見できるかもしれません。

では、ダイヤモンドより硬い物質、いわゆる「スーパーダイヤモンド」は存在するのでしょうか。

科学者たちは、これまでの研究により、「BC8(eight-atom body-centered cubic)」という構造が、ダイヤモンドを越える硬さを持つと考えています。

このBC8構造のスーパーダイヤモンドは、通常のダイヤモンドと比べて圧力に対して30%高い抵抗力を示す可能性があります。

しかし、炭素原子におけるBC8構造の生成は、これまでに成功していません。

今回、オレイニク氏ら研究チームは、スーパーコンピュータを使ったシミュレーションにより、炭素原子でBC8を生成するために何が必要か分析しました。