■「人間の生存能力が試されている」

 このように知的能力は衰えてはいなかったブゴルスキー氏だったが、頭脳労働による疲労を感じるようになり、左耳の聴力は失われ、事故から2年後には神経の破壊により顔の左半分が麻痺してしまった。

 年を経るごとにブゴルスキー氏の顔の右半分は年齢相応の老化が見られるのだが、興味深いことに麻痺したほうの左半分は19年前から時が止まったように若々しいままであるという。

誤って粒子加速器に頭を入れてしまい“陽子ビームの直撃”に遭った科学者はどうなったか
(画像=「Howandwhys」の記事より,『TOCANA』より 引用)

 時折発作が起きる症状に見舞われるようになったものの、日常生活に支障をきたすことなく研究者としての職務を全うし今も存命中のブゴルスキー氏だが、この事故は政府当局の守秘範囲に含まれるものであったたため十数年間は明かされることはなかった。

 ブゴルスキー氏は今も年に2回、モスクワの放射線診療所を訪れて検査を受け、原発事故犠牲者に会って親交を温めているのだが、彼はほかの犠牲者たちに比べて自分は幸運だと考えているという。

 ソ連崩壊後に事故が知られるようになり、ブゴルスキー氏の功績が讃えられたが、1996年に彼がてんかん治療薬を無償にするために障害者資格を申請すると状況は一変してしまったという。ソ連崩壊後の地方自治体には予算がなく、障害者申請は却下され、てんかん治療薬の入手に今も苦労しているということだ。

 ブゴルスキー氏は西側の研究者に自分のことを知ってもらいたいとも考えており、自分が誰かにとって興味深い研究になると確信しているという。自分の状況を陽子ビームに撃たれた後の“生存テスト”であるともとらえている。

「これは事実上、陽子戦争の意図せぬ実験です。私は試されています。人間の生存能力が試されているのです」とブゴルスキー氏は語る。

 人類で唯一、陽子ビームで撃ち抜かれた人物だけに、その去就には引き続き注目が集まる。

参考:「Howandwhys」ほか

文=仲田しんじ

提供元・TOCANA

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