その過程で起きた「権力集中」はご存じのとおり、いま中国の役人は「学のない文革世代は役に立たない」などと口が裂けても言えなくなっている。
この結果、このコラムが指摘するように、中国指導者の世代交代が遅れ始めている。習近平氏がトップの座に就いたのは59歳のときだが、仮に2032年まで4期務めたところで引退し、下の1960年代生まれに後を継がせるとすると、後継者は70歳前後になる。
「そんな年寄りではまずい」と、1970年代生まれに後を継がせようにも、このコラムが指摘するように、その世代は2024年の現時点で未だ省の書記や省長のポストすら経験していない。そんな未熟者を2027年の第21回党大会で「5年後のトップ含み」で政治局常務委員に就かせるのか??
仮に習近平氏が2037年まで5期務めて84歳で引退するとすれば、そのとき75歳前後、日本で言えば後期高齢者に当たる1960年代生まれを新トップにするのか?「それはまずい」とするなら、1960年代生まれはスキップして、1970年代生まれが新トップに就くことになるが、そのトップだって、就任時には65歳前後の高齢者になっている勘定だ。
中国の世代交代の遅れは、単に年齢だけの問題ではない。習近平世代と一つ下の1960年代世代は、教養の有る無し、西側世界との距離など、育ち方がまるで違う。
もちろん文革世代の中にも、運良く質の高い教育を受ける機会に恵まれた人、20歳代も後半にさしかかったところで、1977年ようやく再開された大学入試の難関を潜りぬけて大学教育を受けた人もいる。しかし、世代全体として見ると、上や下の世代に比べて教養レベルが低い、国際経験も乏しい人が多いことは否定のしようがない。
そんな世代を中心として高齢化が進む中国の指導者層は、今後世界が大転変しそうな21世紀をうまく潜り抜けていけるように国を指導していけるのだろうか。
コロナ対策を巡る混乱や後手を引いてばかりの経済政策を見るにつけ、習近平政権の能力には不安を覚えることが増えた。そもそも「不文憲法」とも言われた指導者交代ルールを破ることがどんな結末を招くかを想像できない点がこの世代の至らなさだったという気もする。