色の見え方には個人差があり、年齢や性別によって異なると言われています。

自分が見ている世界と他の人が見ている世界は、微妙に異なるわけです。

新しい研究では、人の生活パターンによっても、こうした視覚への影響が現れており、景色の見え方が変化すると分かりました。

国際高等専門学校に所属する大塚作一氏ら研究チームが、「朝型の人」と「夜型の人」では、朝の景色の見え方が異なると報告したのです。

研究の詳細は、2024年4月17日付の学術誌『Journal of the SOCIETY for INFORMATION DISPLAY』に掲載されました。

目次

  • 「自分の見ている世界」と「他人が見ている世界」は異なる
  • 「朝型」と「夜型」では朝の風景の見え方が異なっている
  • 夜型の人は、「夜の視覚」を残したまま朝を迎える

「自分の見ている世界」と「他人が見ている世界」は異なる

私たち人間は、それぞれが全く同じ目や脳を持っているわけではありません。

当然、それら目や脳が生み出す視覚にもいくらか違いが生じます。

「自分の見ている世界」と「他人が見ている世界」は同じではないのです。

自分の見ている赤は、他人から見ても同じ赤なのだろうか?
自分の見ている赤は、他人から見ても同じ赤なのだろうか? / Credit:canva

自分の見ている赤色は、他の人から見ても同じ赤色なんだろうか? 同じ言葉で表現しているから齟齬がないだけで、実は違うものを見ているのではないか?

そんな疑問を抱いたことはないでしょうか? これは誰もが一度は感じる疑問だと言いますが、実際人によって色の見え方や感じ方は異なっている可能性があります。

では、どのような要素が見え方の違いを生じさせるのでしょうか。

例えば、男女の違いがあります。

これまでの発見では、「同じ色相を知覚するのに、男性は女性よりもやや長い波長を必要とする」と分かっています。

この違いにより、男性は女性に比べて、ミカンのオレンジ色がより赤く見ている可能性があるようです。

同じ景色でも性別や年齢で見え方は異なる
同じ景色でも性別や年齢で見え方は異なる / Credit:Canva

そして見え方の違いを生じさせる要因は、他にも多く存在します。

その中には、未だ明らかになっていない要因もあるはずです。

そこで今回、大塚氏ら研究チームは、新たな要素として生活パターンの違いに着目しました。

彼らは「朝型」と「夜型」の違いが、世界の見え方にどのような違いを生むか研究したのです。

「朝型」と「夜型」では朝の風景の見え方が異なっている

まず研究チームは、現実世界の明暗コントラストをそのまま再現した写真を用意しました。

この写真の撮影には、HDR(High Dynamic Range)という映像技術を利用しています。

従来の映像技術では影が黒くつぶれたり明るい部分が白飛びしたりしますが、HDR映像では、明るい部分と暗い部分のどちらも犠牲にならず、よりリアルな描写が可能になるのです。

次にチームは、この「自然でリアルな写真」を元に、コントラストや輝度を調整した写真をいくつか準備しました。

そして、それぞれの写真を朝型の人や夜型の人に見せ、それらがどの時刻に撮影されたと感じるのか調べました。

朝型と夜型では見え方が異なると判明
朝型と夜型では見え方が異なると判明 / Credit:大塚 作一(国際高等専門学校)_【世界初】朝の見え方が生活パターンの影響で大きく異なることを発見。国際高専 大塚 作一教授の研究グループ(2024)

その結果、朝型の人はメリハリのある写真(コントラストを上げ、輝度を下げた写真)を朝だと感じました。

一方、夜型の人は、全体的に明るく白っぽい写真(コントラストを下げ、輝度を上げた写真)を朝だと感じると分かりました。

朝型の人と夜型の人では、同じ朝の風景でも、見え方が大きく異なっていたのです。

では、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。