概日リズムは1日を通して地続きにつながっているので、寝るタイミングで急に部屋を暗くしたからといって、正常な睡眠サイクルに戻るわけではありません。
夜が明るすぎると「アルツハイマー病」になりやすいのか?
そして研究チームが関心を寄せているのは「夜間の過度な明るさがアルツハイマー病の発症につながっているのか?」という問題でした。
アルツハイマー病は脳の神経変性疾患の一つであり、記憶力や思考能力がゆっくりと失われ、最終的には日常生活の単純な作業も自力ではできなくなる病気です。
夜間の過度な明るさが概日リズムの乱れを招き、概日リズムの乱れが脳の神経変性を引き起こすのであれば、アルツハイマー病の発症リスクが高くなっても不思議ではありません。
実際に中国とイタリアで行われた先行研究では、夜間に高レベルの屋外光にさらされていた人口集団は認知症の有病率が有意に高いことが示されていました。
ただ夜間の屋外光とアルツハイマー病との関係性についてはまだ明らかになっていません。
そこでチームはこの問題を新たに検証することにしました。
夜が明るい地域ほど、アルツハイマー病が増加!
本調査では2012年〜2018年にかけて収集されたデータを対象に、アメリカ全土の「光害レベル」と「アルツハイマー病の有病率」との関係性を分析しました。
光害レベルについては人工衛星で記録された夜間の光強度をアメリカ全土の州レベルと郡レベルを含めて調査。
アルツハイマー病の有病率に関しては、アメリカ在住の人々の慢性疾患の有病率を追跡しているデータバンク(Centers for Medicare and Medicaid Services :CMS)から収集しました。
また年齢・性別・人種・糖尿病・高血圧・心疾患・肥満など、アルツハイマー病の発症率に影響を及ぼす可能性のある他の因子も考慮しています。
これらの因子を調整した後に、夜間の光害レベルが高い地域と低い地域を比較して、アルツハイマー病の有病率がどう違うかを調べました。