■「3つのどれを選んでも良いのでは」
森山氏は選択肢の4つのうち、「のりこ」「ゆり」「こう」の3つについて、「並べ方の工夫に数学的な意図・思想を感じるため、どれを選んでも良いと思います」とも口にしている。
「ゆり」を正解とする根拠については、「5個のまとまりが3つと、1個のまとまりが1つある」のが一目で分かりやすい、というのが本問の主張でしょう。確かに、先述したサビタイジングのことを考慮すれば、これが最も分かりやすいおはじきの配置だと考えるのも一理あると考えます」と分析。
また、小学校の学習教材「算数セット」に同梱されているブロックのセットには「5個のまとまり」や「10個のまとまり」を作れる道具も含まれているため、「5個のまとまり」によって数えることに馴染みがある小学1年生も、少なくないと考えられる。
しかし、「にー、しー、ろー、やー」という数え方が存在したり、一般的に「十進法」が使用されている点を考慮すると、やはり「のりこ」と「こう」の並べ方も、十分に「分かりやすい」と言えるだろう。
その上で、選択肢の1つのみを「正解」と定めた今回の問題は、やはり「悪問」と読んで差し支えない印象を受ける。
問題を見た際の感想について、森山氏は「率直に申し上げて、小学校1年生のどのような能力を測るための設問なのか、当初は分かりかねました」と、驚きを隠さない。
続けて「ゆりさんの並べ方が最も分かりやすい」という結論ありきの出題となっており、その考えに基づいて正誤判定されてしまう点は大いに疑問です」と率直な意見を寄せてくれた。
「サビタイジング」を考慮した出題の可能性は大いにあり得るが、いくつあるかが「見てすぐにわかる」という表現は、やはり問題文として相応しくないだろう。
森山氏も「感覚は人によって千差万別でしょうから、やはり多種多様な回答が考えられる設問なのではないでしょうか」と、口にしていた。
理不尽な指導や教育によって、児童たちがその教科への関心を失ってしまっては本末転倒。そうした「悪問」が無くなることを願いたい。