私たち人間の根本には、人と人とのつながりを求めて、互いに助け合うことのできる集団や社会を形成しようとする性質が強く根付いています。

ヒトは弱肉強食の自然界においては肉体的に強い存在ではありません。一人で野生の中に放り出されて生き残るのは至難の業でしょう。

しかしヒトは古来、仲間と協力し、大きな社会集団を築くことで、地球上でここまで支配的な種となり得たのです。

こうした仲間同士の絆を深めるのに一役買ったのが「恐怖」なのだとコラット氏は指摘します。

その証拠にこれまでの心理研究で、火災や事故を一緒に生き延びた集団、自然災害を乗り越えた生存者たち、戦闘に参加した軍人のグループでは、お互いの心理的な絆が深まり、仲間意識が向上することが示されているのです。

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このように恐怖体験を共有することで同胞意識が高まる心理反応の一つを「テンド・アンド・ビフレンド(Tend and befriend)」といいます。

例えば、ある集団が同じ脅威に直面すると、赤ちゃんや子供など弱い存在を守ろうとする反応(=Tend)が起こり、さらに危機を乗り越えるために仲間同士で団結する反応(=Befriend)が促されるのです。

この心理反応は男性でも見られますが、特に自分の子供を守ろうとする女性において強く起こる反応で、愛情ホルモンとして知られる「オキシトシン」の分泌によって調節されることがわかっています。

これらを踏まえると、一緒にお化け屋敷を乗り越えた友達同士は社会的なつながりが強化されると考えられます。

そして最後に、コントロールされた恐怖体験で培われた心の強さは、実際の恐怖体験への耐性を高めることにもつながるのです。

その3:実際の恐怖体験への「耐性」が強まる!

コントロールされた恐怖体験の積み重ねは最悪の事態に対処する訓練にもなる、とコラット氏は話します。

同氏いわく、娯楽を通じて繰り返された恐怖体験は、実際の事故や災害、パンデミックなどに冷静に対処するメンタルを養うことにつながるのです。