キシレンは目や呼吸器を刺激し、中枢神経系に悪影響を及ぼす可能性があると言われています。
またトリクロロエチレンも、皮膚や粘膜を刺激し、認知能力や行動能力を低下させる場合があります。
そして、ワン氏ら研究チームによると、私たちが何気なく使っている芳香剤にはベンゼン、フタル酸エステル、リモネンなどのVOCが含まれていることがあります。
これらは空気中の他の物質と反応し、ホルムアルデヒドや二次有機エアロゾルなどの二次汚染物質を生成。中枢神経系(脳や脊髄)の損傷やホルモンレベルの変化など、人間の健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。
ただし、有害な影響のすべてがすぐに現れるわけでもないため、芳香剤の長期間の使用が実際にどのような悪影響を及ぼすのか調べることは困難です。
それでも科学者たちは、VOCの長期的な吸入が、発がんリスクや認知症のリスクを高めたりすると考えてきました。
そこで今回、ワン氏ら研究チームは、認知症であるアルツハイマー病に焦点を当て、VOCを生じさせる家庭用品の使用との関連を調べることにしました。
芳香剤の使用とアルツハイマー病には関連がある
アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Association)によると、アメリカでは約700万人がアルツハイマー病を患っていると推定されており、その数は2050年までに約1300万に倍増すると予測されています。
いったいどんな要素がここまでアルツハイマー病を広げているのでしょうか。
今回、ワン氏ら研究チームは、アルツハイマー病のリスクを高めると推測されている化学物質に着目し、それらが含まれている可能性がある8つの家庭用品と認知症であるアルツハイマー病との関連を調べることにしました。
彼らは2018年の中国人に対する健康と寿命に関する調査「CLHLS 2018」から、65歳以上の中国人1万387人の健康情報を取得し、家庭用品(殺虫剤、虫歯予防剤、芳香剤、消毒液など)の使用状況と、アルツハイマー病との関連性を分析したのです。