準備不足であったと思われる部分も

 報道への釈明コメントとしては、どう評価できるか。危機管理・広報コンサルタントで、長年、企業・自治体の管理職向けに模擬緊急記者会見トレーニングや危機管理広報、SNSリスク対策研修・セミナーの講師なども手掛けてきた平能哲也氏はいう。

「危機管理広報の観点からみると、記事掲載当日に迅速に対応しているという点は評価できる半面、準備不足であったと思われる部分が目につきます。初回の声明文としては、報道内容は事実無根であるという主張を記載しつつ、詳細については調査した上で改めて発表するという方法もあったかと思いますが、一気にすべてを書いてしまったという印象を受けます。

 最大の問題点は、事実誤認だとする一方で『細かく事実誤認を指摘は致しません』『反論しても(略)無意味な水掛け論になる』として、記事のどの部分がどのように事実誤認であるのかを具体的に指摘していない点と、橋本さんは一部を認めているのか、全面否定なのかという、本人に確認したかの有無も含めて、橋本さん本人からの言葉が記載されていない点です。多くの方が最も関心を持つポイントに触れずに、橋本さんの擁護に終始しており、これで理解や共感を得るのは困難でしょう。

 また、危機管理広報上の重要な鉄則の一つは、相手側を必要以上に怒らせないことですが、声明文には『週刊文春』の取材過程・手法や姿勢を非難するかのような表現があり、わざわざ『週刊文春』側を怒らせて続報を出させるような姿勢をとっており、こうした言動はなんのメリットも生みません。『取材の対象者が私のそれらの発言を橋本環奈が発したものとしてすり替え、取材に答えたものと考えられる』という記述も、告発者を挑発しており、元社員などが『週刊文春』や他のメディアに新たな告発をすることを誘発しかねません。パワハラを受けている人が音声を録音して告発したという過去の事例もあり、音声などの新たな証拠が出てくる可能性もあります。危機管理広報においては『もしこのような対応をした場合、どのような悪い方向にいく可能性があるのか』というマイナスの想像力が必要ですが、それが欠如しているように感じます」