その結果、障壁が無い場合には参加者の反応時間が短くなるのに対し、障壁がある場合には、反応時間に有意な差が認められませんでした。
このことは、参加者が単にアンドロイドの目の動きにつられているのではなく、「Nikolaには何が見えているか。何を気にしているか」と、アンドロイドの心を読み取ろうとして、その視線につられた可能性が高いと考えられます。
3つ目の実験では、2つ目の実験と同じ状況で、ターゲットを光源ではなく音源に変えました。
その結果、参加者は障壁のあるなしに関わらず、アンドロイドの目線につられて反応時間が短くなりました。
これは参加者が「Nikolaには音が聞こえていて、音が鳴った方に目線を送った」とアンドロイドの心を読み取ろうとし、その目線につられたことを示唆しています。
今回の一連の研究結果から明らかになったのは、「人間はアンドロイドの目の動きにつられてしまう」ということです。
しかもそれは、単に視覚的変化に反応していたわけではなく、人間を相手にした時と同じように、アンドロイドの目の動きから心の状態を読み取ろうとした上で生じていることを実証するものとなりました。
もちろん、アンドロイドに人間のような心はありません。
しかし、アンドロイドには心があるかのように、人間に感じさせることは可能だと分かります。
また、アンドロイドに心に似た機能を追加したりすることも可能でしょう。
そして私たち人間は、そんなアンドロイドを「ただの物」として見ることはなく、「心のある存在」として見る傾向があり、自身の行動に影響を及ぼします。
ちなみに、イタリア技術研究所(IIT)の2021年の研究では、人間はロボットでも見つめられると集中を乱されることが分かっています。