もし、私たちがアンドロイドを人間のように心のある存在として認識できるなら、「何に関心があるのだろう。何を見ているのだろう」とアンドロイドの心に注目し、「注意シフト」が発生することでしょう。
逆に、私たちがアンドロイドを単なる「物」としか認識できないなら、「心を読み取る注意シフト」は発生しないはずです。
その場合、アンドロイドの目の動きは、私たちにとって、「ただの動き」であり、心の伴わない「視覚情報の変化」に過ぎないことになります。
今回、佐藤氏ら研究チームは、この点を明らかにするため、視線を動かせるアンドロイド「Nikola」を用いた3つの心理実験を行うことにしました。
人はアンドロイドの「心に注目」し、その「目の動き」につられてしまう
アンドロイド「Nikola」を用いた実験は、49人の参加者を対象に実施されました。
1つ目の実験では、アンドロイドの左右に点滅する光源を設置し、参加者に光源の点滅している向きを、ボタンを押して回答してもらいました。
その際、アンドロイドは点滅する光源に目を向けたり向けなかったりしました。
その結果、アンドロイドの目が動く向きと、点滅する光源の向きが一致する場合、不一致な場合よりも、参加者はボタンを押すまでの反応時間が短くなりました。
このことは、参加者がアンドロイドの目の動きにつられて「注意シフト」を引き起こしたことを示しています。
しかしこれだけでは、参加者が単純な視覚的変化につられただけの可能性があります。
そこで2つ目の実験では、アンドロイドと光源の間に視線を遮る障壁を設置しました。
アンドロイドからは光源が見えない状態にしたわけです。