一方、取り込まれた葉緑体は、CHO細胞の細胞質に存在しており、その一部は細胞核の周りを囲むように配置していました。

その後チームが分析と観察を続けたところ、葉緑体は取り込まれてから少なくとも2日間、光合成活性を保持していました。

しかし4日目に入ると、その活性は著しく減少し、長く持たないことを示しました。

画像
葉緑体の電子顕微鏡写真。葉緑体内部に、光合成を行う酵素が配置されているチラコイド膜の構造が層状に保たれている。 / Credit:松永幸大(東京大学)_光合成活性を持つ葉緑体を動物細胞に移植することに成功 ―光合成可能な動物細胞作製の突破口を開く―(2024)

ちなみに光合成活性の減少は、取り込まれた葉緑体に見られる「チラコイド膜」の構造が崩れるタイミングと一致することも分かりました。

このチラコイド膜とは、葉緑体内部に存在する幾重にも折りたたまれた膜からなる網目構造のことであり、光合成の光化学反応が起こる場所でもあります。

つまり、取り込まれた葉緑体が光合成活性を失ったのは、2日目以降、チラコイド膜がCHO細胞の分解作用に耐えられなくなり、その機能を失ったからだと考えられます。

画像
(左)移植後2日目。チラコイド膜の構造が層状に保たれている、(右)移植後4日目。チラコイド膜構造はなくなり、葉緑体形状も崩れている / Credit:松永幸大(東京大学)_光合成活性を持つ葉緑体を動物細胞に移植することに成功 ―光合成可能な動物細胞作製の突破口を開く―(2024)

今回の研究では、少なくとも2日間、ハムスターの細胞に移植した葉緑体の光合成活性を保持することに成功しました。

この結果だけでは、「光合成できるハムスターやその他の動物を作り出せる」とは言えませんが、それでも、この種の研究において突破口を開くものとはなりました。

研究チームは現在、移植した葉緑体の光合成活性をより長く維持するための技術開発を進めており、移植した葉緑体からどの程度の酸素が発生しているかも調べていきたいと語っています。