最近、そんな私たちのイメージを一層刺激する研究結果が報告されました。

東京大学に所属する松永幸大氏ら研究チームが、葉緑体をハムスターの細胞に移植することに成功したのです。

まず研究チームは、原始的な藻類「シゾン」から、光合成活性を持つ葉緑体を単離することに成功しました。

そしてその葉緑体を、ハムスターの卵巣から作製された培養細胞「CHO細胞(抗体や医薬品の産生に多用されている)」に取り込ませることにしました。

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藻類から移植された葉緑体を持つハムスター培養細胞。青緑は細胞核、黄緑は膜構造を持った細胞内小器官、赤紫は葉緑体を示す。 / Credit:松永幸大(東京大学)_光合成活性を持つ葉緑体を動物細胞に移植することに成功 ―光合成可能な動物細胞作製の突破口を開く―(2024)

これまでは細いガラス管を使用して葉緑体を注入するなどしていましたが、今回研究チームは、そのような従来の方法は使わずに、CHO細胞の貪食作用を高めることで、最大45個の葉緑体をこの培養細胞に取り込ませることに成功しました。

ちなみに、この「貪食」とは、細胞がその細胞膜を使って大きな粒子を取り込む作用のことです。

この作用は、細胞が異物・細菌・ウイルスなどを食べるように取り込み、分解して処理することで、免疫系の重要な役割を果たしています。

つまり研究チームは、この異物を取り込み処理する機能を上手く利用し、葉緑体をハムスターの細胞に移植したのです。

では、移植された葉緑体はどうなっていくのでしょうか。

ハムスターの細胞内の「葉緑体」が、光合成活性を2日間維持!

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移植された葉緑体は光合成活性を維持 / Credit:松永幸大(東京大学)_光合成活性を持つ葉緑体を動物細胞に移植することに成功 ―光合成可能な動物細胞作製の突破口を開く―(2024)

研究チームの観察によると、CHO細胞の増殖は、葉緑体を取り込んだ後も阻害されず、正常に細胞分裂を繰り返しました。