「年末調整(※)を廃止し、全納税者に確定申告を行わせる」
※年末調整:企業(雇用者)が、給料から天引きした「概算税額(=源泉徴収額)」と、「確定した税額」との差額を計算し、超過分を返金したり、不足分を徴収したりする精算作業のこと。
河野太郎デジタル大臣の公約が話題になっている。
“国民総確定申告制”、とでもいうべきこの案に、税務職員は「相当量の事務が加わる」と懸念を示し、納税者は「税務署がパンクする」と不安を抱いているという。
年末調整廃止?議論呼ぶ自民総裁選、河野氏が公約に「仕事増える」税の現場困惑
では、「相当量」とはどれほどの人数なのか?
「最大で5,000万人」
である。国税庁が毎年発行する“国税庁レポート”に以下の記載がある。
「年末調整を行うことにより、5,000万人を超える給与所得者のうち多くが確定申告の手続を要することなく課税関係を完結できる」
国税庁レポート2024
国税庁も、この5,000万人が税務署に押し寄せるようなプランを、現役閣僚が提案するとは夢にも思わなかったことだろう。
一方、企業はこれを歓迎するはずだ。これまで、この5,000万人分の申告作業を担ってきたのは企業である。大企業を想像してはいけない。日本の企業の84%は、従業員数20人以下――製造業以外なら5人以下――の「小規模事業者」だ※1)。この小規模事業者たちが、少ない人手を割き、会計ソフトの費用や税理士への報酬を負担し、国の徴税に「協力」してきた。しかも、1947年の年末調整導入以降77年の長きにわたって、だ。