高齢者の転倒事故を軽減する衝撃吸収材「ころやわ」を開発・販売する静岡県浜松市の株式会社Magic Shields。前編では、同社代表取締役CEOの下村明司氏にころやわの機能や役割、導入実績などを聞きました。
後編では、世界的企業の社員だった下村氏がMagic Shieldsを設立するに至った理由や、なぜころやわを開発したのか、そしてころやわが目指す光景について聞きます。
レーサーと事故は隣り合わせ
静岡県西部の経済の中核を担うヤマハ。紫のロゴのヤマハ株式会社、赤いロゴのヤマハ発動機株式会社は、いずれも磐田・浜松・掛川などに雇用と受注をもたらしています。
「私はかつて、ヤマハ発動機に社員として14年在籍していました。バイクの設計に携わりながらも、自分でレースにも出場していました」
主にオフロードのレースに出場していたという下村氏。ヤマハ発動機の社員や関係者には、こうした「自らもレースに挑戦する」という人が少なくないようです。しかし、モーターレースには常に事故がつきもの。
「ヤマハに在籍した14年間で、幾度も事故に遭いました。鎖骨をいっぺんに2本折ったりとか……。天竜川のコースで前転して、地面とバイクの間に自分の身体が入ってしまったということもあります。それと、友人がバイク事故でなくなったという出来事もありまして……」
モトクロス(専用のオートバイで走行する競技)は、毎月のように世界のどこかのコースで死傷者が発生します。オフロードを果敢に疾走する勇者は、常に事故の危険と隣り合わせです。
そうした数々の出来事が、下村氏に「安全に対する意識」を与えたといいます。
「私はロッククライミングもやるのですが、そこでも友人が事故で亡くなりました。それらの経験から、ニュース番組で報道されている悲惨な交通事故の話題などはとても見ていられなくなりました」
センサー内蔵製品も開発
安全を担保する発明品をビジネスにする。そうした志から、下村氏は2019年にMagic Shieldsを設立します。