営業自粛も便乗商法もあった江戸時代
余談ですが、江戸幕府は麻疹の流行を抑えるために一部の施設を営業禁止にしたりしており、先述した居酒屋や屋形船屋だけでなく、遊郭や風呂屋などといった施設が営業禁止になりました。
また飲食店の多くも営業禁止になっており、麻疹流行時は江戸の社会を支えていた娯楽のほとんどがなくなったのです。
言うまでもなく江戸時代にはインターネットもゲーム機もないので、現代の新型コロナウイルスパンデミックの緊急事態宣言の時以上に庶民の生活が大変なものであったのは語るまでもないでしょう。
また先述したはしか絵以外にも麻疹除けのものはあり、神社仏閣は麻疹に効くお札を、医師や薬屋は麻疹の治療薬を売り始めました。
さらに麻疹によいとされている食べ物の噂も広がり、中にはそういった食べ物を投機対象にして一儲けをしようとする人さえいたのです。
2020年の新型コロナウイルスのパンデミックの初期にはマスクの転売が行われたり、「○○という薬は効果がある」といった真偽のあやふやな情報がインターネット上に流れたりしていました。
江戸時代の麻疹流行時にも似たようなことが行われていたことを見ると、人間の本質は案外江戸時代とあまり変わっていないのかもしれません。
参考文献
文化財論文 文久2(1862)年の麻疹流行に伴う麻疹絵の出版とその位置づけ – 全国遺跡報告総覧 (nabunken.go.jp)
ライター
華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。