今から約6600万年前に恐竜時代が終わりを迎えた後、新たな一大勢力を築いたのが「哺乳類」でした。

哺乳類は虫や魚、鳥といった他のグループに比べて、平均的な体のサイズが大きいことで知られます。

みなさんが哺乳類と聞いて思い浮かべる動物も、イヌやネコ、ウマ、ゾウを筆頭に大体が中型〜大型のものでしょう。

その一方で、哺乳類にはネズミやコウモリなど小さなグループもたくさん存在します。

そこで今回は最初にこの小さなグループに注目して、これまでに存在した「最も小さな哺乳類」とは誰なのかを見てみましょう。

またその後で地上を闊歩した最大の哺乳類についても見ていきます。

地球に存在した「史上最小の哺乳類」とは?

今日、地球上に存在する哺乳類の中で最も小さいのは「コビトジャコウネズミ(学名:Suncus etruscus)」です

コビトジャコウネズミはトガリネズミ科ジャコウネズミ属の一種で、世界最小の哺乳類の称号を手にしています。

体重は大人でも約2〜3グラムで体長は35〜48ミリ、平均的なネズミよりも約20倍は軽いといわれています。

コビトジャコウネズミ
コビトジャコウネズミ / Credit: ja.wikipedia

コビトジャコウネズミは南アジア、南ヨーロッパの森林や低木の茂みに生息し、昆虫を主食としています。

彼らのような体の小さい哺乳類は外部の温度変化に敏感であり、体温を一定に保つために多くのエネルギー生産をする必要があるので、代謝率がとても高くなっています。

日中はほとんど常に活発に動き回って餌探しをしており、心拍数はなんと1秒あたり14回という速さで鼓動しています。

これは私たちの10倍以上の速さです。

この異常なエネルギー生産を維持するために、毎日体重の8倍もの餌を食べなければなりません。

体重70キロの人であれば、1日に560キロものご飯を食べ続ける計算です。

こうした無理な生態のゆえか、トガリネズミの寿命は約15カ月と非常に短くなっています。

では、このコビトジャコウネズミが「史上最小の哺乳類」かというと、そうではありません。

過去の地球にはこれよりもっと小さな哺乳類がいました。

それが始新世(約5600万〜3390万年前)に存在した「バトドノイデス・ヴァンホウテニ(Batodonoides vanhouteni)」というトガリネズミです。

こちらの写真は現生するコビトジャコウネズミとサイズ比較したもので、左がB. ヴァンホウテニの復元イメージとなります。

B. ヴァンホウテニの化石は1998年に米ワイオミング州とカリフォルニア州の地層から初めて発見されました。

見つかったのは歯の化石でしたが、その大きさはなんと1ミリ未満しかなく、全体の正確な大きさは推定できていないものの、体重はわずか1.3グラム程だったと見られています。

これは1円玉(1グラム)とほとんど変わらない軽さです。

化石発見に関わった研究者たちも「B. ヴァンホウテニはこれまで知られている中で、最も小さな陸生哺乳類とみて間違いないだろう」と述べています。

本種がどんな生態をしていたかは不明瞭ですが、おそらくコビトジャコウネズミと同じように「早く生きて早く死ぬ」をモットーにしていたでしょう。

しかし最小がわかると今度は最大が気になるのが人間の性というもの。

ただ哺乳類を全部ひっくるめて最大というとシロナガスクジラで決まりですが、ここでは地上に存在した「最大の陸生哺乳類」という括りで見ていきましょう。