わずか4週目でうつ症状が改善!
今回の試験では、名古屋大学の精神科に入院している4名のうつ病患者に協力してもらい、頭部にヘッドバンドを装着して、1日2時間、延べ8週間にわたりエルフ・エルメ(1〜8Hz、10μT)の磁場環境に置きました。
治療効果と安全性は、精神科医とAIにより2週間ごとに評価を行っています。
AIによる評価は、合成音声を使った面接質問に患者が声で回答するコンピューター面談で、人間の評価者とは違い、主観を完全に排した評価ができます。
その結果、治療を開始して4週目からうつ症状の有意な改善効果が認められたことがわかりました。
治療開始時から2週ごとの平均改善率は、2週目で31%、4週目で45%、6週目で60%、8週目で68%と右肩上がりに効果が現れていたのです。
AIによるうつ重症度の評価の平均値も、治療開始時の32.8点から8週間後には12.5点にまで改善しています。
さらに重要な点として、患者の身体や認知機能への有害な作用も認められませんでした。
このことからエルフ・エルメ療法は、従来の薬物治療のような副作用の危険性がないだけでなく、通院を必要としない在宅療法が可能であるため、うつ治療を大きく飛躍させる方法になると期待されます。
チームは現在、ヘッドバンド型だけでなく、枕の下に敷けるエルフ・エルメ装置も開発しているとのことです。
また研究者によれば、患者は治療中の超低磁場環境を自覚することもないため、例えば在宅ワークや日常生活の妨げにもならないと話します。
「毎日2時間、自宅でヘッドバンドをつけるだけでうつ病が治る」
そんな日が近いうちにやってくるかもしれません。
参考文献
うつ病に対する超低周波変動・超微弱磁場環境(ELF-ELME)治療による症状改善を解明
元論文
Extremely Low Frequency, Extremely Low Magnetic Environment for depression: An open-label trial
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。