自然はときに驚くべきスーパーパワーを持った生物を生み落とします。
ミャンマーの河川に分布する小さな魚「ダニオネラ・セレブラム(Danionella cerebrum)」は、人の爪ほどの大きさしかないにもかかわらず、140デシベル(dB)という爆音を出せるのです。
これは救急車のサイレンよりも大きく、一般的な拳銃が発する銃声やジェット機の音に匹敵します。
なぜそんなことが可能なのか今まで謎でしたが、独シャリテー – ベルリン医科大学(CUB)の研究により、小さな体から爆音が生じるメカニズムがついに解明されました。
研究の詳細は2024年2月26日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。
目次
- 1センチの体から銃声並みの爆音が出せる
- 音を出すメカニズムを解明
1センチの体から銃声並みの爆音が出せる
ダニオネラ・セレブラム(Danionella cerebrum)はミャンマーの都市ヤンゴンの北にある河川で2021年に発見され、新種として記載されたばかりのコイ科魚類です。
大人になっても体長10〜13.5ミリほどしかなく、世界最小の魚類のひとつとなっています。
最大の特徴は体が半透明の薄い皮膚に覆われており、頭蓋骨の上部がないため、脳が直接に透けて見えることです。
そのため、魚を傷つけることなく体内の生体機能を観察でき、研究者たちは新たなモデル生物として大いに注目しています。
調査によると脳の体積はわずか0.6立方ミリメートルしかなく、これはあらゆる成魚の中でも最小クラスです。
ちなみに学名のセレブラム(cerebrum)は「大脳」を意味しています。
さらに研究者たちは本種の生態を調べる中で、彼らがこのサイズからは考えられない爆音を出せることに気づきました。
まるで電動ドライバーを使っているような「ギリ・ギリ・ブイーン」という連続的な音で、音量は140dB以上に達するといいます。
140dBといえば、救急車のサイレン(90〜120dB)よりも大きく、一般的な拳銃の銃声やジェットエンジンの近くにいるときの音量に匹敵します。
ちなみに人間が音に対して耳に痛みを感じ始めるのは130dBからなので、彼らの発する音を耳の間近でまともに聞くとかなり痛いと考えられます。
その実際の音がこちらです。音量に注意してご視聴ください。
研究者らは小さな体でこれほどの爆音を出す仕組みが分かりませんでしたが、今回ついにその謎の解明に成功しました。