金額としては全て間違いなく報告書に記載されていたわけで、「不記載」ではないし、ましてや「裏金」などという嫌疑が生じる余地は一切無かったわけです。

こうした記載の仕方は西村氏の他、武田良太議員(当時:衆院選で福岡11区で立候補も落選)が行っており、その旨については2月29日の政倫審で説明されてました。このことも枝野議員が指摘しています。

それでも、西村氏や武田氏は派閥の幹部だったため、他の議員の不記載に関する道義的責任も一定程度あるし、本人もそういう認識でした。

しかし、派閥における立場から来る責任というのは、自民党という党内での関係です。候補者個人として扱われる有権者に対する選挙の関係において、「ウラ金💰」「裏金」マークを付けられるというのは、余りに実態からかけ離れたレッテル貼りであり、虚偽と言っていいでしょう。

政治資金規正法・政治資金収支報告書の趣旨と「虚偽記載」という表現

西村氏・武田氏も、派閥からの資金の移動が生じており、実態と乖離した会計処理をしていた、という点では日常用語としての「虚偽記載」という表現は妥当し得るかもしれません。

しかし、政治資金規正法上で刑罰の対象となるところの「虚偽の記載」とは異なるし、混同を避ける必要はあると言えます。1

刑罰対象とならなかったのは、「同じ一つの行為によって自分が売り上げ、自己の懐に入る収入」という意味ではノルマ超過分の還付金として扱っても、自分の収入そのものとして扱っても、本質は同じだ、収益が発生した原因行為は同じであるという事が影響しているように思われます。 (※ただし、例えば事業所得を雑所得とするといった単なる項目上の振り分け問題とも異なる。)

ところが、政治資金規正法・政治資金収支報告書の趣旨として収支の流れを透明化する、特に入金の出所を明らかにするというものがあるので、実際には派閥からの資金の移動があったものを自己のみで完結した収入として記載することは、違法ではないとしても不適切な記載方法と言わざるを得ないもので、上述の性質論と併せて政治活動の自由とのバランスから不処罰2となったに過ぎないと言えます。