常識的に考えれば、アバロ元運輸相は政府の閣僚であるから医療品取り扱い企業のどこともコンタクトをもつことがでははずだ。また、公式に入札を通して輸入業者を決めるべきであった。ところが、マスクの輸入を実際に手掛けたのはソルシオネス・デ・ヘスティオン・イ・アポヨ・ア・エムプレサス(Soluciónes de Gestión y Apoyo a Empresas, S.L.)という企業で(以後、ヘスティオン・イ・アポヨ)、医療品などは全く手掛けたことのない業者だった。入札もせず、なぜそのような企業にマスクの輸入を手掛けさせたのか? 答えは簡単である。密かに手数料を稼ぐ為だ。しかも、この企業は上述したファン・カルロス・クエト氏が関係している会社だった。

輸入したマスクの多くが不良品

これまでメディアによる追跡調査で目立っているのは、2020年3月の輸入である。彼らは港湾局、鉄道関連局、郵便局、内務省、カナリア諸島政府、バレアレス諸島政府から合わせて5500万ユーロ(66億円)余りの受注を貰い、上述した医療品の輸入に全く経験のない企業が輸入を請け負ったのである。(2024年2月24日付「ザ・オブジェクティブ」から引用)。

中国の15社から輸入した。ところが、品質の多くは不良品としてみなされるようなマスクばかりだった。しかし、支払いは全て前金であった。

Covid-19のパンデミックが拡大している中であった。兎に角、早急にマスクを手に入れる必要があった。マスクを調達できるのであれば、どこからでも輸入しようという体制でもあった。だから、品質も粗悪品が目立った。今も44万枚のマスクが運輸省の倉庫に在庫として収まっているという。また上述した自治体の政府などにも不良品の在庫がたまっている。

ところが、仲介した各自はちゃっかり手数料は頂戴しているのだ。コルド・ガルシア氏は150万ユーロ(1億8000万円)を稼ぎ、ビクトル・アル・ダマ氏は550万ユーロ(6億6000万円)、ファン・カルロス・クエト氏は960万ユーロ(11億5200万円)を稼いでいる。。コルド・ガルシア氏は多額の入金を隠すために彼の一家の子供を含め、それぞれの口座に入金させていた。また複数のマンションも購入していた。(2月24日付「ザ・オブジェクティブ」から引用)。他の二人は企業経営者なので、稼いだ手数料を隠蔽する手段は色々とある。