安倍政治がもたらした敗北
衆院選で自民党が歴史的な大敗を喫し、立憲民主党、国民民主党が躍進し、自公政権が過半数割れをしました。メディアには「安倍政治の負の遺産」(政治学者・牧原出氏)が自民の敗北を招いたという視点が不足しています。政局舞台裏の情報が溢れていても、長期的な分析が足りないように思います。
メディアは石破氏の失策の数々を責めることに懸命で、「安倍政治が民主党から政権を奪還して、アベノミクスのゼロ金利・財政拡張で最長の政権を維持した。その間、旧統一教会との癒着、安倍派を中心とする政治資金・裏金事件、円安と物価高などの遺産で、政権を失う瀬戸際に追い込まれた。安倍政治は勝って負け、結局、ご破算になった」という指摘があまり目につきません。
異次元金融緩和と巨額の国債発行という遺産で、金融・金利政策の自由度がなくなり、円安にも対応できず、国民は物価高に苦しんでいます。表面的には裏金問題が自民党の最大の敗因のように見えても、安倍政治の積り積もった遺産による敗因も限りなく大きい。
世論調査(読売、30日)の結果をみると、「自公過半数割れはよかったが58%に達し、よくなかったが25%」でした。今後の政権の枠組みについて「自民党中心の政権の継続が43%、野党中心の政権に交代が40%」です。過半数割れは大差で歓迎する一方、政権交代には賛否が半々です。「野党はよくやった。でも政権は任せられない」。民意のねじれが感じられます。
民主党時代の鳩山、菅政権当時の拙劣な政権運営の記憶が今も生きています。「自公連立に日本維新の会が加わることには反対48%、賛成29%」、「自公連立に国民民主党が加わることには反対51%、賛成25%」と同じような比率です。今の与党を過半数に追い込むことが野党の目標であったのに、政権の枠組みを広げて、与党が過半数を回復してしまうことの懸念を民意は感じ取っています。