この結果、UNRWAの活動は大幅に制限される。1967年にイスラエルが併合した東エルサレムも禁止対象に含まれている。特に、紛争の続くガザ地区においては、UNRWAの支援を頼りにする約200万人の住民にとって大きな影響が懸念されている。

イスラエル側の決定に対し、UNRWAのフィリップ・ラザリ―二事務局長は28日、公式のXで、「今晩のイスラエル議会によるUNRWAに対する投票は前例のないものであり、危険な前例となる。それは国連憲章に反対し、国際法に基づくイスラエル国の義務に違反している」、「これらの法案は、特に人々が1年以上地獄のような状況を経験しているガザでは、パレスチナ人の苦しみをさらに悪化させるだけだ。現地の65万人以上の少年少女が教育を受けられなくなり、全世代の子供たちが危険にさらされることになる」と述べた。

国連のグテーレス事務総長や米国は、事前にこの法案に反対を表明した。ドイツ、フランス、イギリス、カナダ、オーストラリア、日本、韓国の外相たちは、共同声明でイスラエル政府に対して国際的な義務を果たすよう強く求めた。

イスラエル側のUNRWA解体論にはそれなりの理由はある。イスラエルが1948年に建国された際、70万人のパレスチナ難民の救済を目的としてUNRWAが創設された。そしてハマスはガザ区でパレスチナ人に対して食糧や医療の提供のほか、学校教育まで支援してきたが、ガザ区の学校教育ではイスラム教徒のテロは美化され、イスラエルを悪者にする憎悪に満ちたコンテンツがカリキュラムとなっている。すなわち、米国やドイツ、日本からの支援金でガザ区でテロ組織ハマスの予備軍が育てられているわけだ。UNRWAの職員がハマスのテロ奇襲に関与していたことが判明し、イスラエル側のUNRWA解体要求は一層、強まっていったわけだ。

一方、国連側や人権擁護団体はUNRWAの職員がテロに関与していたという事実より、困窮下にあるパレスチナ人に食糧や医療品などを支援してきたUNRWAの職員がいなくなれば、パレスチナ人は生存できなくなるといった危機感のほうが強い。眼前で苦しむパレスチナ人の姿、負傷して苦しむ子供たちの姿を目撃すれば、欧米のメディアを含む多くの人権団体がイスラエル軍の軍事活動に対して批判的になるのは理解できる。