ただし研究者らが指摘するように、二酸化硫黄のエアロゾルを人為的に散布することにはいくつものリスクがあります。
例えば、雨雲が二酸化硫黄を取り込むことで「酸性雨」が多くなったり、成層圏にあって太陽からの有害な紫外線を吸収してくれる「オゾン層」を破壊してしまう恐れがあるのです。
そこで研究チームは二酸化硫黄のようなデメリットを防ぎながら、太陽光を効果的に反射できる物質が他にないかどうかを調べることにしました。
そうして最もベストな材料として該当したのが、なんと「ダイヤモンド」だったのです。
ダイヤモンドを散布することで地球を冷やせる!
チームは今回、二酸化硫黄の他に、方解石、アルミニウム、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アナターゼ、ルチル(アナターゼとルチルはどちらも酸化チタンの一種)の計7種類の物質をエアロゾル化させて成層圏に散布した場合の気候シミュレーションを行うことに。
そして太陽光の反射性や大気中での浮遊性、さらにエアロゾル同士の凝集性などの点から、最も効果的に地球の温度を下げられる物質はどれかを評価しました。
シミュレーションは各エアロゾルを散布した後、45年間にわたる地球への影響を検証しています。
その結果、最もベストな選択肢だったのがダイヤモンド粒子でした。
ダイヤモンド粒子は太陽光の反射効率が最も高い上に、地球環境への悪影響が最も少なかったのです。
二酸化硫黄を含む他の化学物質に比べて、ダイヤモンド粒子は化学的に安定していて、他の化合物を反応しない不活性な性質があります。
そのため、オゾン層を破壊したり、酸性雨を降らすこともありませんし、またダイヤモンド粒子同士で凝集することもありません。
このエアロゾルが「凝集するかしないか」は非常に重要なポイントです。
というのもエアロゾルが凝集してしまった場合、粒子の大きさがバラバラになってしまうので、成層圏全体に均一に拡散しにくくなります。